研究課題/領域番号 |
23K17718
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | トライボロジー / ポリシロキサン / 開環重合 / 表面処理 / 表面改質 / 濃厚ブラシ / 高分子ブラシ / リビング重合 / 表面科学 |
研究開始時の研究の概要 |
材料表面を低摩擦化する技術の一例として、高密度ポリマーブラシ(HDPB)が挙げられる。しかし、従来のHDPBは有機物質に限定され、堅牢性が低かった。無機物質から成るHDPBは堅牢性に優れた低摩擦表面を提供できる可能性がある一方で、その調製法はまだ確立されていない。 本研究では、無機ポリマーの一種であるポリシロキサンを高密度に基板表面に導入する手法の開発に挑戦し、堅牢な低摩擦表面を創製する。具体的には、基板表面の水酸基を重合開始点とみなし、環状シロキサンモノマーの開環リビング重合によって目的を達成する。さらには、材料機能化の新たなトレンドやSDGsの達成、低炭素社会の実現に貢献していく。
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研究実績の概要 |
グアニジン塩基と水の存在下で環状シロキサンモノマーの開環重合を進めるとリビング的に重合が進行することが、2018年に報告された。当反応は水分子が開始剤として作用するため、基材表面の水酸基も環状シロキサンモノマーの開環重合において開始剤として作用すると予想され、本研究を着想した。 2023年度は、基材表面の水酸基を開始点とした環状シロキサンモノマーの開環重合を実施した。その結果、狙い通りポリシロキサンを基材表面にグラフトすることができた。フリーポリマーの分子量や膜厚などのパラメータから算出したグラフト密度はビニルポリマーの系で高密度ポリマーブラシ(濃厚ブラシ)と定義される値と同等あるいはそれ以上であり、濃厚ポリシロキサンブラシの形成が示唆された。また、摩擦試験を実施したところ、ブランク基板と比較してポリシロキサングラフト膜の摩擦係数は低く、ポリシロキサンのグラフトによって基材表面に低摩擦特性を付与できることがわかった。また、基材表面だけでなく、微粒子表面の水酸基を開始点として同様にポリシロキサンをグラフトすることも可能であり、グラフト前後で微粒子の分散性やゼータ電位が変化した。本手法は基材および微粒子の耐摩耗性を改善する表面処理法である可能性が示唆された。今後は、重合条件の最適化や耐摩耗性等の試験を実施し、従来の有機骨格の濃厚ブラシと比較しながらポリシロキサンブラシの堅牢性を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、基材の水酸基を開始点として環状シロキサンモノマーの開環重合が進行することが明らかとなった。さらに、時間とともに濃厚ポリシロキサンブラシの膜厚が増大し、リビング的に重合が進行することもわかった。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
モノマー濃度や溶媒、触媒、温度を注意深く検討し、濃厚ポリシロキサンブラシ合成の最適条件を模索する。また、濃厚ポリシロキサンブラシを導入した表面の耐摩耗性や溶媒中での摩擦係数などの評価を遂行し、これまでの有機骨格からなる濃厚ポリマーブラシと比較した本研究の特徴を整理する。さらに次年度は本研究の最終年度でもあるため、成果を学会で積極的に発信する。
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