研究課題/領域番号 |
23K17719
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平方 寛之 京都大学, 工学研究科, 教授 (40362454)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | ナノマイクロ材料力学 |
研究開始時の研究の概要 |
二次元結晶がファンデルワールス(vdW)力により密接積層したvdW積層構造体は、大きな変形を許容し破壊しにくい性質(不破壊性)を示す。さらに、塑性変形が生じても電子線を照射することで形状が復元する(自己復元性)。本研究では、vdW積層構造体を対象として、層間vdW相互作用とその復元性に関する力学評価実験を行い、不破壊性および自己復元性の機構を明らかにして、その背後にある普遍的な力学を解明する。
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研究実績の概要 |
二次元結晶がファンデルワールス(vdW)力により密接積層したvdW積層構造体は、破壊することなく大きな曲げ変形を許容するのみならず、切欠き底からの破壊が生じにくい性質を持つ。これらの特異な変形・破壊特性は、二次元結晶間のvdW相互作用の可逆性に起因すると考えられるが、その詳細は未解明である。本研究は、vdW積層構造体における壊れにくい性質(不破壊性)および変形が復元する特性(自己復元性)の発現機構を明らかにして、その背後にある普遍的な力学を解明することを目的とする。本年度の実績の概要は、以下の通りである。 (1) 層間vdW相互作用の力学的評価: vdW積層構造体における層間すべりの発生と進展を力学的に評価するため、vdW積層構造体のマイクロ試験片に単一の層間すべりを発生・進展させて、その抵抗を力学的に評価する方法の開発に取り組んだ。供試材として遷移金属ダイカルコゲナイド(MoTe2など)を用い、階段状片持ちはり試験片に基づく試験方法を考案し、本手法により単一層間すべりを導入・進展できることを示した。 (2) 変形特性と自己復元性の評価実験: 高配向性熱分解グラファイトやMoTe2を対象として、負荷・除荷実験により、変形と層間強度の復元性を評価して基礎データを取得した。これにより、可逆的な層間すべりが順次発生・進展する変形の微視的メカニズムを明らかにした。 (3) 力学モデルの構築: 変形の微視的メカニズムに基づいて、vdW積層構造体をvdW力により相互作用する離散的な変形体層の積層構造としてモデル化し、層間のvdW相互作用を記述する力学モデルを構築した。実験結果との対照から、構築したモデルはvdW積層構造体の変形特性を普遍的に再現できることを明らかにした。これらの成果を、Journal of Applied Physics誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間中の研究実施計画は、(1)層間vdW相互作用の力学的評価、(2)変形特性と自己復元性の評価実験、および(3)力学モデルの構築であった。研究実績の概要欄に記載の通り、おおむね計画通りに研究を進めることができた。 本研究において、試験片を集束イオンビームにより加工した。イオンビーム照射により試験片表面には1 nm~10 nmオーダー厚さの表面改質層が形成される。研究の過程で、表面改質層により本材の変形特性が大きく変化することに気付いた。そこで、当初の予定にはなかったが、vdW積層構造体の変形特性に及ぼす表面層効果の解明にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度に引き続き、(1)層間vdW相互作用の力学的評価、(2)変形特性と自己復元性の評価実験、および(3)力学モデルの構築を推し進める。 (1) 層間vdW相互作用の力学的評価: 前年度に考案した階段状片持ちはり試験方法に基づいた層間すべり強度の力学的評価方法を確立する。本手法では、実験結果を基に(3)で開発している離散変形体層モデルを用いて層間強度を定量的に評価する。 (2) 変形特性と自己復元性の評価実験: 前年度に引き続き、高配向性熱分解グラファイトやMoTe2を対象として、変形と層間強度に関するデータを取得する。単調な負荷・除荷試験に加えて、繰返し荷重下における疲労や、時間依存型変形に対する抵抗を評価する。さらに、イオンビーム照射により表面改質層を形成して、変形特性に及ぼす表面層効果を解明する。 (3) 力学モデルの構築: 拡充した実験結果との対照により、構築した離散変形体層モデルの有効性と普遍性を検証する。
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