研究課題/領域番号 |
23K17721
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 彰宏 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50252606)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 開放系 / 内部応力分布 / 付加製造技術 / マルチスケール理論 / アダプティブ構造 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究課題では、固体の内部構造の幾何学的不適合性とそれを解消するために発生する内力の自己平衡性に着目し、内力と力学特性の関係の発現メカニズムを解明する。さらにこのメカニズムを基本として時間発展する自己平衡構造を実現するために、外力の負荷と物質の付加を同時に行う開放系固体力学理論を体系化する。その応用として、物質付加と内力付与を同時に実現する三次元力学プリンターを提案するとともに、内部に能動的なアクチュエータとしての材料を組込むことにより、構造全体の剛性を可変にする新奇の適応機械材料の設計に挑戦することを目的として、理論構築とシミュレーション、試作、実験による検証の一連の研究を実施する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、テンセグリティ構造の内力と力学特性の関係性の発現メカニズムを明らかにし、多様な連続体系・離散系の固体力学問題を、幾何学的不適合性の時間発展とそれを解消するために発生する内力の自己平衡関係として定式化することを通じて、そのような自己平衡構造を実現するための外力の負荷と物質の付加を同時に行う開放系固体力学理論を体系化することを目指している。そして、その具現として、物質付加と内力付与を同時に実現する“三次元(3D)力学プリンター”の提案を行うとともに、一連の研究の発展として内部に能動的なアクチュエータとしての材料を組込むことにより、構造全体の剛性を可変にする新奇の適応機械材料の設計に挑戦することを目的としている。 この研究目的のための第一歩として、2023年度は、剛部材と、柔部材からなる自立テンセグリティ構造の力学モデルを構築し、大回転幾何学的非線形性を考慮した理論の定式化を行った。そして、自己釣り合い状態における内力を変化させた構造体に対して、自己平衡状態で負荷を受けたときの応答としての剛性を自在に設計できる可能性を計算機シミュレーションにより明らかにした。またその応用例として、不均一な内力分布を付与したテンセグリティブロック構造についての解析を行い、さまざまな変形様態を実現できる性能を有することを明らかにした。 また、摺動部を有する広義のテンセグリティ構造のモデルとして、南京玉すだれの力学問題を定式化し、ひずみエネルギー関数とその補エネルギー関数の関係性、すなわち幾何学と力学の双対性に注目して解析した。加えて、この構造モデルの変形についての直接シミュレーションに見出された飛び移り転移現象を不安定性解析の観点から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず理論解析とシミュレーションについて、先行して研究を行なった。狭義のテンセグリティ構造は剛・柔それぞれ単独では構造体として自立しない部材要素がある種の特殊な配列によって自立し外力に対しては変形体としての応答が現れるように設計された構造と一般に理解されている。一方、本研究では、その概念を拡張すれば、硬質相と軟質相からなる真珠層材料、液滴と固体表面の相互作用系、流体と薄肉弾性容器からなる油圧・空気圧アクチュエータ、筋骨格と皮膚の連成によって生み出される顔の表情など、多様な物質要素の複合体が、広義のテンセグリティ構造と位置付けることができるというアイデアから、このような剛・柔複合構造に対して、安定性解析を理論・シミュレーションから検討することができることを具体的に見出している。以上の理由から、現在、萌芽的知見が得られつつある進捗状況であると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
圧縮負荷下での付加製造による内力の付与と自発曲率発現について汎用の3Dプリンターを基礎として、治具を用いた内力の付与と付加製造を同時実現できる3D力学プリンターを新たに開発し、自己平衡構造体の製作と力学特性評価を行う。 さらにテンセグリティ構造についての力学研究で得られた知見をもとに、内力変化による可変剛性周期構造体の内部構造(トポロジーと寸法)を設計・試作・検証する。ここではワークステーションをベースにした構造計算サーバーを用いて幾何学的不適合性を取り扱うための拡張有限要素法(X-FEM)の定式化を用い内力分布と力学特性を予測する。3D力学プリンターには、複雑三次元構造体の成形を実現するためにねじ送り機構による負荷装置と台座回転軸を新たに導入する。精度を向上させるために、リアルタイム有限要素解析と非接触変位計による計測のハイブリッド法を考案し、表面位置の同定に基づいてプリンターのノズル位置を正確に決定するGコードを生成する。切断法による内力の推定、および、材料試験機による力学応答の試験を行い、結果の検証を通じて理論の妥当性を確認する。
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