研究課題/領域番号 |
23K17736
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分20:機械力学、ロボティクスおよびその関連分野
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
多田隈 理一郎 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50520813)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 卵管的弾性振動 / 湾曲繊毛メカニズム / 超適応推進 |
研究開始時の研究の概要 |
本応募課題においては、卵管の繊毛細胞の搬送機能を規範とした、粘性液が混在し、サイズや形状の異なる管腔内部でも推進できる移動メカニズムを開発する。 すなわち、傾きや長さが異なり、様々な方向に湾曲可能な繊毛が、最適なヤング率と断面二次モーメントを有するように具現化する。具体的には、その材質や形状に加え、湾曲繊毛式移動体内部の振動モータの回転方向や速度、およびトルクや駆動タイミングなどのパラメータを、管腔内の粘性液のレイノルズ数に合わせて最適制御する。 その上で、卵管の振動現象を工学的に応用する際に必要となる、異なるスケールでありながら搬送機能を如何にして実現させるかという設計法を確立する。
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研究実績の概要 |
異形管腔内への超適応推進を実現するため、傾きや長さが異なり、様々な方向に湾曲可能な繊毛を、最適なヤング率と断面二次モーメントを有するように配置した湾曲繊毛メカニズムとしての、円筒形の配管探査ロボットを試作し、下水管を模擬した、水が内部に存在する様々な形状の配管の中を走行する実験を行った。 繊毛の断面二次モーメントを変えるために、円形断面や長方形断面の繊毛を試作し、またその傾きや長さも、様々な値に設定して、模擬下水管内部を走行する実験を行った。 試作した配管探査ロボットのサイズは、胴体直径25[mm]、胴体長さ38[mm]、繊毛部を含めた胴体直径42[mm]であり、重量は30[g]である。水が内部に存在する配管の中を走行可能とするため、配管探査ロボットの胴体は、防水構造となっている。 卵管的弾性振動を、ロボット胴体外部に放射状に配置した繊毛に行わせるために、ロボット胴体内部に、偏心重り付きの直流モータを配置して、その回転方向や速度、およびトルクや駆動タイミングなどのパラメータを様々に制御し、繊毛の弾性振動の変化がもたらすロボットの移動機能の変化を、定量的に評価した。 配管探査ロボット胴体内部に配置するアクチュエータとしては、フレキシブル基板上に自作した薄型コイルと、ネオジム磁石とを組み合わせた、より小型・軽量のアクチュエータも開発して、その振動が繊毛に伝播されることで発生する推力の大きさを計測する実験も行った。繊毛の材質も、3Dプリンタ用の光硬化性樹脂であるElastic 50A以外に、エラストマーなどを用いて製作し、そのヤング率が、配管探査ロボットの推力生成のために適しているかどうかを、実験的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3Dプリンタ用の光硬化性樹脂であるElastic 50Aを用いて製作した繊毛を、移動メカニズムとしての配管探査ロボットの外周に複数個配置して、その傾きや長さおよび断面形状を様々に変化させつつ、それぞれのパラメータの条件において、下水管を模擬した、水が内部に存在する配管の中を走行する実験を複数回行った。 走行実験においては、配管内の水位を、様々な高さに調節しながら、その水位が、配管探査ロボットの移動速度や、移動の安定性に与える影響を定量的に確認した。すなわち、配管探査ロボットの外周において、水に覆われる部分の割合を変化させ、それが配管探査ロボットの走行能力に与える影響を検証した。 その結果、どのような断面形状を有する繊毛であっても、水が存在する配管内部で、十分な大きさの推力を発生することは可能であるが、断面形状が長方形の繊毛の方が、より大きな推力を、配管探査ロボットに与えることが可能であることが判明した。このような研究成果は、今後、下水管などの狭隘空間を探査する移動メカニズムの設計に、直接的に役立つ知見と考えられる。 これらの学術的な成果を、フルペーパー論文にまとめて、ロボティクス・メカトロニクスに関する英文論文誌であるJournal of Robotics and Mechatronics (JRM)に投稿した(現在査読中)。初年度における研究成果を、英文論文誌にフルペーパー論文として投稿できたことから、当初の計画以上に、研究が進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度においては、一定の内径を有する樹脂製の配管内部に水を入れて実験を行ったが、令和6年度以降においては、樹脂製の配管のみならず、様々な断面形状を有する配管や構造物の内部に、湾曲繊毛式移動体を入れて走行実験を行い、十分な移動機能が実現できるかを定量的に確認する。 特に、「粘性液が存在する、サイズ・形状の異なる狭隘空間」としての、大型動物死体内などを模擬した実験環境を構築し、単に断面形状が異なるのみならず、その形状そのものが弾性的に変形しうる、柔らかいチューブ状の構造の内部においても、湾曲繊毛式移動体が確実に、安定して移動できるようにするためのメカニズムを、生体内の卵管の繊毛群による推力生成の原理を解明・応用しつつ構築する。 そのためには、移動体外部に配置された繊毛に振動を与えるアクチュエータも、偏心重り付きのモータ以外のものを自作することも含めて検討しながら、最適化してゆくことを目指す。
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