研究課題/領域番号 |
23K17738
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分20:機械力学、ロボティクスおよびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
相樂 隆正 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20192594)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | ハイドロゲル / 還元収縮 / ポリアリルアミンゲル / ナノ金属導電パス / バイポーラ参照極 / 付着制御 / 付着力 / 這動 / 電気化学制御 / ソフトロボット |
研究開始時の研究の概要 |
水中で力強く働くミリメートルサイズのソフトロボットの開発は、医用生体工学応用、廃炉工程での放射性元素捕集など人の手や金属・プラスチック製のロボットが入れない空間での小規模作業、水中長期間作業、ミクロ流体流路のバルブなどに欠かせません。本研究では、化学的要素としてのゲルやナノ粒子をブロックのように組み上げて、外部からの電圧印加だけで駆動できるソフトロボットを作ることを狙います。新しいロボットの開発の概念を立証するための研究です。
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研究実績の概要 |
ソフトロボットの本体に用いるハイドロゲルの構造を根本的に見直すことから取り組んだ。ビオロゲンの酸化還元によって急速に水中で収縮と膨張を繰り返すことができることに加え、これらの動きによって破断したり剛性を失わないこと、内部に付加的な電子伝導パスを組み込めることをハイドロゲルに求める課題とした。 これまで主に検討してきた修飾ポリ-L-リジンのグルタルアルデヒド架橋ハイドロゲルの品質向上とともに、ポリアリルアミン + 前駆体ビオロゲン + 4点架橋剤の混合による一段階ワン・ポットでの縮合反応による新規ハイドロゲルの合成、糖鎖を原料としたハイセットハイドロゲルの合成を推進した。ポリアリルアミン原料のハイドロゲルでは、ゲル化時の鋳型整形に成功した。これらで得られたゲルの評価と合成条件理想化を進め、条件が絞り込まれた。また、電気化学物性の評価に着手した。 ハイドロゲル内部に金属ナノ導電体を導入するプロトタイプとして、銀ナノワイヤの共存下での架橋に加え、ゲル内でのアルデヒドを利用した前駆体還元による方法を検討した。後者の実験中に、ゲル表皮に残った前駆体が観察用のレーザー光で還元して金ナノ構造が析出する興味深い反応が見出された。いずれの方法を用いても、電極との間での速い電子移動が起こったが、接触面積が限定されるなどの課題が残った。 ソフトロボットの駆動では、夾雑物に影響されない電位設定が必要であることから、いわゆるバイポーラ参照極活用の可能性を検討した。最近になって、白金のみで隔たバイポーラ参照極は良好に機能するという国外有数研究室からの報告があるが、本研究でのモデル考察と実験事実によって、その報告が正しくないことを突き止めた。 ハイドロゲルと電極との付着の電位制御をモデル系で検討した結果、ゲル材料の剛性が最重要であることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・ハイドロゲルの特質の理解が進み、合成法の選択肢も広げることができつつあるため、ソフトロボットの基体構成に見通しがついたこと。 ・研究の後半での焦点である電位による付着と剥離の制御への展開条件と知見がほぼ揃ったこと。 ・導電経路への要求を満たす設計の方針が確認できつつあること。 ・伸縮と同期した這動のための接触点の設計がやや遅れているが、既に用いる候補のメカニズムが絞り込まれ、電位による付着と剥離の制御のための実験着手が可能になったこと。 ・ソフトロボット駆動環境の整備のための知見が得られつつあること。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトロボットの本体を完成させ、これにブロック構成として「足」を付ける。この足は更に、電極と接した状態で電極電位の制御によって付着を強めたり、反発して剥離したりするスイッチングができるものとする。すなわち、水中の導電体表面で電気的操作を与えるだけで一方向に併進運動するソフトロボットの化学ブロック構成を具体化する研究を推進する。そのための研究計画は主に以下のとおりである。 足が履く靴として導電性ナノ粒子を用い、本体を構成するハイドロゲルの酸化還元による伸縮とシンクロして付着-剥離運動を起こさせる。その際、外部からの突発的刺激が、ゲル内での酸化還元による運動を勝手に変えてしまうことのない独立性を実現する。水の出入りがゲルの高度な伸縮性を担うため、イオン強度効果を徹底的に抑え込むことに挑戦し、限界まで高速・大振幅な動きを実現する。これは、靴と基板との相互作用が塩濃度に敏感であると予見されるため、重要な挑戦となる。 『本体(酸化還元収縮性ハイドロゲル)-足-靴』のブロック構成を達成し、将来の自立化も可能なソフトロボット設計指針を提案する。
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