研究課題/領域番号 |
23K17766
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
|
研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
皆川 正寛 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (20584684)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 有機トランジスタ / 有機電界効果トランジスタ / バイオセンサ / グルコース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では伝達特性を制御できる有機トランジスタを同一基板上に複数個実装し,それらの出力値を解析することで唾液中グルコースのような希薄濃度でも広い濃度範囲かつ正確に測定できる新たなグルコースセンサの創出に挑戦する。 本課題が順調に進めば,唾液等を検体とした簡便な血糖値測定を可能にするだけでなく,感染症を引き起こす細菌やウィルスの検査を無痛かつ簡便に行う新手法の実現にも波及する。さらに,将来のオンライン診療に必要な自己測定検査キットの開発分野も後押しすると見込まれることから,本研究課題は国民の健康寿命やQOLの向上に大変意義深く,社会に幅広く貢献できると期待される。
|
研究実績の概要 |
ウェットプロセスで複数個の電極を作製した基板上において、伝達特性の異なるトランジスタを作製できるかを明らかにするために、n-type Si wafer/SiO2 (300 nm)/Ag nanoink (130 nm)/AgOx/pentacene (70 nm)の構造を持つ素子を作製した。電極は、親撥パターニング法で形成した。銀ナノインクの濃度を5 wt% (dispersion in ethylene glycol and IPA)とし、2000 rpm、30 secの条件でスピンコート法により塗布した後、ホットプレートで100 ℃、および230 ℃で20 minずつ大気中にて焼成した。電極形成後は、基板上の電極をエリアごとに覆うメタルマスクをUV/O3装置の照射時間とともに移動させ、表面酸化処理時間の異なる電極を形成した。酸化時間は0、600、1800 secの3種類とした。その後、OTS処理により基板表面を疎水化し、pentacene (70 nm)を真空蒸着法にて成膜した。チャネル長は100 um、チャネル幅は2 mmとした。素子作製後、半導体パラメータアナライザー(Agilent Technologies、E5263A)を用い、暗中・窒素雰囲気中・室温下で伝達特性を測定した。 伝達特性の測定結果において、銀ナノインク電極の酸化時間によって電流値の差が見られ、さらに酸化時間を長くすると閾値電圧の絶対値が小さくなっていることが分かった。これは、酸化銀の仕事関数がpentaceneのイオン化ポテンシャルよりも大きくなったため、活性層から電極への電子移動が促進され、ホール注入性が良くなったためと考えられた。仮に、電流値に閾値を定めて、ある電圧値で各伝達特性の電流値がその閾値を超えているかを判定すれば、唾液中の希薄血糖濃度の推定が可能となると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は使い捨て出来るほど安価で、かつ唾液中から血糖値を測定できるセンサの実現を最終目標に掲げている。これに対して、現在までに、①酸化時間により有機トランジスタの伝達特性を制御できる点、②同一基板上に伝達特性の異なる有機トランジスタ(マルチ有機トランジスタ)を簡便に形成できる点、③伝達特性の違いから血糖濃度の違いを判別できる点の3つが実現可能性を示すことができた。したがって、現在までの進捗はおおむね順調と言える。 しかしながら、本年度はpentacene蒸着膜を有機半導体層に用いたことから、酸化時間に対する伝達特性の違いが予想よりも小さかった点や、オールウェットプロセスで有機トランジスタ作製を実現できていない点などが課題として挙げられた。このため、次年度以降はこれらの課題を解決すべく研究を継続する。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度で挙げられた課題を解決すべく、以下の実験に取り組んでいく予定である。 一つ目は、酸化時間に対する伝達特性の変化を大きくするために、これまで実績のある有機半導体を活性層に用いて同様の実験を行う、候補としては、同じアセン系でワイドギャップ材料であるテトラセン,アントラセン誘導体を考えている。0sec(酸化なし)の状態では電流が流れないが、酸化処理を行うことで出力電流が次第に大きくなるような特性を示す有機トランジスタを実現させる。 二つ目は、オール溶液プロセスで作製可能な有機トランジスタの開発を目指す。既に電極形成はウェットプロセスで行えている。よって、本年度は一つ目の実験を並行して可溶性ワイドギャップ半導体の選定および低温乾燥プロセスを用いた有機トランジスタの作製と評価を行う。これにより,フレキシブル基板など高温焼成できない基板材料上に有機トランジスタを簡便に作製できるようになると期待される。
|