研究課題/領域番号 |
23K17789
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分23:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (70628213)
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研究分担者 |
廣瀬 智陽子 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 主任技師 (10897656)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 風洞実験 / 屋外観測 / 渦スケール / ビル風 / 都市換気 / 通風換気 |
研究開始時の研究の概要 |
都市域の風は建物群が作る大小様々な渦が重畳された乱流により構成されており,通風換気,ビル風,都市換気など大小様々な空間スケールの空気流動現象に影響する.こうした対象と現象のスケール多様性から,都市域の風を建築学の観点において有効に利用することを目的に,空間スケールの異なる空気流動現象に強く影響する乱れの渦サイズを明らかにする.加えて,基礎学門の知見を実学としての建築学に波及させる.以上より,本課題は,建築を取り巻く多様な空間スケールの空気流動現象に対して,影響力のある渦サイズと乱流エネルギースペクトルの関係を解明し,都市・建築デザインにおける有効な風利用のための直感的な渦サイズを明示する.
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研究実績の概要 |
本課題では,従来風洞実験として取り組まれてきた建物群周辺気流に関する流動実験をあえて屋外環境下に構築することで,大小様々なスケールの渦が包含された流動条件における屋外縮小模型実験を実施する.屋外実験により,大気擾乱,都市境界層,縮小模型による内部境界層,建物に依るエネルギー生成の全てが重畳された条件において,建物群周辺気流と通風気流の計測を行い,都市換気,ビル風,通風換気に対する渦スケールの影響評価を行うものである.また,屋外観測に加えて,風洞実験により再現した都市境界層流れと建物流れの干渉する実験系を構築し,異なる乱れスケールが干渉することによる強風や弱風の発生について分析を行う. 初年度は,屋外観測データを取得することを目的に,研究棟屋上に高周波数で風速の時系列データを取得するための観測システムの設置を行なった.太陽光パネルとバッテリーによる観測システムを構築し,2台の超音波風速計を常設することによって,風速3成分の時系列データの取得を試みた.しかしながら,観測システムの設置場所による問題により,風速データに大幅な電気的ノイズが重畳させることを確認した. 加えて,屋外で熱線流速計及び粒子可視化画像流速測定法を適用することを最終的な目標とし,平均風速や流量,乱れの長さスケールなどの統計量,二点相関分布などを取得するための実験装置の準備を風洞装置を用いて行なった.複数の建物群からなる計測対象に対して,熱線流速系と粒子可視化画像流速測定法の参照データとなるケースを風洞実験により取得した.加えて,速度場の解析プログラムを整備することで,屋外および屋内での取得データを公開するための準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,屋外観測データを取得することを目的として屋外観測システムの開発を進めた.建物屋上の観測タワーを用いて,研究棟屋上に高周波数で風速の時系列データを取得するための観測システムの設置を行なった.観測システムの駆動には,太陽光パネルとバッテリーによる常時観測システムを用い,2台の超音波風速計を常設することによって,風速3成分の時系列データを周波数10Hzで取得するシステムを完成させた.観測システム自体の動作確認は十分に行い,正しく動作することを確認することを事前確認した. 続いて,観測システムを観測タワーに設置し,数ヶ月間の屋外観測を実施した.しかしながら,観測システムの設置場所による問題があることが判明した.取得データを丁寧に分析し,風向,平均風速など,近隣の気象観測所の平均風速を元に,特段問題がないことが確認できたものの,本課題の目的としている瞬間風速の取得という点について,風速データに大幅な電気的ノイズが重畳されていることが確認された.特に,風速のパワースペクトルを分析すると,大気擾乱による低スペクトル領域,いわゆるスペクトルギャップは明確には確認されず,高周波にわたって大幅な振動が含まれていることが確認された.屋外観測システムの構築については,第二年度に再度取り組むことで,円滑な観測実施を目指す. また,風洞実験における参照データ取得は順調に済んでおり,複数の建物配置の単純建物群を対象として,風速の統計的な性質や強風の発生頻度などを分析するに至った.参照条件として屋外観測結果との差異を明確にする意味で,背景情報としての風洞実験結果を整理することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,本課題の研究目的である,非専門家も含めたより直感的な空気流動現象に強く影響する渦サイズを明確にすることを目的として,風洞実験と屋外観測に継続的に取り組む.風洞実験においては,複数の配列条件を対象として,周辺気流の統計的性質や確率分布を明らかにする.具体的には,熱線流速計による境界層内風速プロファイルの取得と,粒子画像可視化計測法を使った建物周辺瞬間速度場の取得を行う.特に,建物高さや配列条件を変更させた場合における歩行者高さの瞬間風速を面的に捉えることを目標とした実験系を構築する.加えて,同じ観測を屋外実験として実施するための準備を進める.屋外観測においては,作成した超音波風速計観測システムの設置場所を変更するなどの対策により,電気的ノイズのない高周波風速データを取得することを試みる.半年を目処に,観測システムによる背景データが取得できるように整備するとともに,取得した風速データの統計解析を進める.背景データとして,数ヶ月に渡る長期観測ができるようになったことを確認した上で,風洞実験と同じ単純建物群周辺気流の屋外計測を始める.計測には超音波風速計と熱線理由速計を用い,高周波で屋外風速の取得を試みる. 以上のデータを取得した後,風洞および屋外観測による瞬間風速の分析を行い,平均風速や流量,乱れの長さスケールなどの統計量に加え,二点相関分布や面内の渦分布の可視化を取り入れ,具体的な渦サイズと現象との対応を整理し,本研究の総括とする予定である.
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