研究課題/領域番号 |
23K17792
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分23:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
箕輪 健一 日本工業大学, 建築学部, 准教授 (70733830)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 形状記憶合金 / 展開構造物 / 可変形態架構 / 組合せ可動HP構造物 / ドーム型シザーズ構造 / 自動開閉機構 / 形状制御 / 形状記憶素材 / パッシブ制振 / 自動開閉 |
研究開始時の研究の概要 |
今後の建築を考えたとき,多くの問題を多角的に解決できる1つの技術を総合的に開発する必要がある。本研究では,構造安全性能・環境性能・施工性能の3つの向上を叶えられる構造物の開発を目的とする。この目的を叶える手立てとして,本研究では形状記憶素材に着目する。具体的な検討内容は,①地上で組み立て外部エネルギーを利用することで立ち上がる架構の開発(施工性の向上)②形状記憶素材をエネルギー吸収部材として用いるパッシブ制振の効果の検討(構造安全性能の向上)③花弁のように日が差すと広がり日射を遮る,また開口部の自動開閉による自然換気の採用など,環境に合わせて可変する構造体の提案(環境性能の向上)である。
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研究実績の概要 |
本年度は,主に仮設構造物などに用いられることが多い展開構造物を対象に,形状記憶合金ばねを利用した自動開閉機構の提案を行った。まず,自動開閉の対象とする構造物として直線状から曲面状に変形する組合せ可動HP構造物を提案した。そして,提案した組合せ可動HP構造物を実際に作製することで,この構造物の展開挙動と構造性能の実測を行った。更に,展開実験により組合せ可動HP構造物の展開に要する荷重の把握をし,重りの重力とばねの弾性力を加味して評価を行うことで,形状記憶合金ばねにより自動開閉を可能とする条件の一例を明らかにした。しかし,この組合せ可動HP構造物に対しては,摩擦力等の抵抗が想定よりも大きかったこともあり,形状記憶合金ばねによる自動開閉の実測には至っていない。このため,引き続き自動開閉の実測に向け形状記憶合金ばねの更新等の実験準備を進めている。 また一般的に,線材のシザーズ機構により架構全体の開閉を行う構造物を提案しているものの,これらは展開挙動に追随する仕上げ材の設置は困難となる場合が考えられる。そこで,より実用的な可変形態架構の開発を行う為に,線材ではなく面材にシザーズ機構を施すことで,シザーズ機構を成す材が内外空間をより明確に区別する架構を提案した。そして,提案した三角形平板により構成したドーム型シザーズ構造は,ジオデシック分割における五角形の開閉率が六角形に比べて若干小さい場合に完全な球体に近付くことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形状記憶合金ばねにより自動開閉を可能とする条件の一例を明らかにしたものの,自動開閉の実現には至っておらず,本年度の目標としていた自動開閉方法の提示が完遂できたとは言いがたく,その点に関する検討が遅れている。しかしながら,開発を進めている可変形態架構として,より実用的になると考えられる三角形平板により構成したドーム型シザーズ構造の形状制御に関しては,想定していた以上の結果が得られており,様々な要因に一貫して対応可能な構造物の開発についても今後の検討により十分な成果を得られると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き縮小模型を作製し,形状記憶素材による展開実験および振動実験を行うことで,その効果を検証する。また,既往の構造物と同様に,接合部実験に基づき構造物全体の性能を把握できるかを検討する。この際,力の釣り合いによる評価だけでなく,ポテンシャルエネルギーによる評価等も試みることで,展開条件や減衰量の評価の精度向上を目指す。そして,耐震性能の向上にあたり,形状記憶素材のエネルギー吸収量が必要量よりも小さい場合は,外部エネルギーを利用したセミアクティブ制振を援用することも検討する。 また,環境性能の向上に向けて,花弁のように日が差すと広がり日射を遮る,また開口部の自動開閉による自然換気の採用など,環境に合わせて可変する構造体の提案を行う。ここで,環境性能の向上を目的とした形態の変形は,外気温によりパッシブに制御できることが望ましいが,必要な形状記憶素材の量によっては外部エネルギーを利用した変形も検討する予定である。
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