研究課題/領域番号 |
23K17824
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 泉 東北大学, 工学研究科, 教授 (20400278)
|
研究分担者 |
西本 昌史 東北大学, 工学研究科, 助教 (20880967)
菅原 優 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40599057)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
|
キーワード | 腐食防食 / 耐食合金 / 電気接点 / 銅合金 |
研究開始時の研究の概要 |
電気接点向け新規Cu合金を開発するための学理として、「高い耐食性」と「低い接触抵抗」の両立が可能な高耐食化原理の探求を行う。CuとSnに複相化が可能な合金元素を添加し、粉末冶金、強加工、熱処理などによりナノ複相組織をつくる。母相に腐食ピットが発生しても、溶解速度の低い第二相により自然に腐食ピットが停止する金属組織の探求を行う。
|
研究実績の概要 |
自動運転など次世代交通システムの安全・安心を支える車載用電気接点向け新規Cu合金を開発するための学理として、「高い耐食性」と「低い接触抵抗」の両立が可能な高耐食化原理の探求を行うことを目的として研究を実施した。種々の検討から、CuにSn、Zn、Al、およびNiを添加することで複相化が行えることが分かった。作製した合金は、四相から構成されていることが分かった。具体的には、母相としてCuを主成分とするCu-Sn-Zn相とCu-Zn-Sn相が存在し、AlとNiが濃化した相が分散すると共に、Sn濃度が95 at%以上のSnリッチ相が分散していることが分かった。 乾湿繰り返し試験を行ったところ、純Cuよりも腐食が軽微であり、腐食試験後の表面接触抵抗の値は純Cuに比較して2桁以上小さいことが分かった。特に、耐食機構を解析するするために、動電位アノード分極を行った。作製した合金は、純Cuより低い腐食電位を示した。作製した合金は、アノード分極に伴い-0.2 V(SHE基準)付近で電流密度の上昇が生じたが、これは純Snにおける電流密度の上昇とほぼ電位が一致した。このことから、Snリッチ相が優先的に溶解することが分かった。試験後にSEM/EDS解析などを行い、電気化学データを溶解形態の観点から整理し、腐食・防食機構を考察した。その結果、Snリッチ相が優先的に溶解することで、それ以外の相を犠牲防食している可能性があることが分かった。また、Snの腐食生成物はCuの腐食生成物よりも電気抵抗が低いため、表面の電気抵抗も低い値を維持できたものと結論付けられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
純Cuよりも耐食性に優れ、しかも腐食試験後の表面接触抵抗の値が純Cuに比較して2桁以上小さい値を示す合金系を見出すことに成功した。さらに、その特性発現機構の推定にも成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
耐食性と腐食試験後の表面接触抵抗の観点から、Cu-Sn-Zn-Al-Ni系合金の組成を最適化する。機械加工などを利用し、組織をさらに微細化し、耐食性と腐食試験後の表面接触抵抗に及ぼすナノ複相化の影響を明確化する。特に、電気化学システムを駆使し、電気化学特性とナノレベル複相組織との関係の定量化を目指す。具体的には、電位-電流曲線を計測し耐食性を腐食ピット発生の臨界電位として、溶解速度を電流として計測し、耐食性とナノ複相組織との関係を定量的に解析する。併せて、電気化学顕微鏡などの最新技術を利用し、腐食のカソード反応サイトを特定し、複相組織の改良に活かしたい。
|