研究課題/領域番号 |
23K17842
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
多湖 輝興 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20304743)
|
研究分担者 |
木村 健太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (70965003)
藤墳 大裕 京都大学, 工学研究科, 助教 (90757105)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | 合成ガス / 二酸化炭素 / 水素 / Cu / MFIゼオライト / 内包構造 / CO2還元 / 銅系触媒 / ゼオライト / ゼオライト内包金属触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
カーボンニュートラル社会の実現には,二酸化炭素(CO2)を燃料(メタノールやe-fuel)や化成品原料(低級アルケンや芳香族類)へ転換する必要があり,その鍵となる成分が水素と一酸化炭素の混合ガス(通称,合成ガス)である.合成ガスは,逆水性ガスシフト反応を,水素過剰条件で進行させることにより得られる.しかし,400℃以下の低温域ではメタン生成反応が主反応であり,RWGS反応を選択的に進行させるためには600℃以上が必要である.研究目的は,二酸化炭素の水素化による合成ガス製造であり,同反応を300℃以下の低温度条件で実現することに挑戦する.
|
研究実績の概要 |
カーボンニュートラル社会の実現には,燃料や化成品原料を二酸化炭素から合成する必要があり,その鍵となる成分が水素(H2)と一酸化炭素(CO)の混合ガス(通称,合成ガス)である.本研究の目的は,二酸化炭素の水素化による合成ガス製造であり,特に, (項目1) 二酸化炭素の水素化を促進する触媒活性点を,二酸化炭素の吸着・濃縮に優れた触媒担体に構築し,(項目2)300℃以下の低温度域における活性化と平衡制約を脱却したCOの選択生成に挑戦する. シリカ(SiO2)源とアルミニウム(Al)源,およびゼオライト構造規定材からなる水溶液に,銅(Cu)源を添加し,水熱合成処理と焼成・還元処理を経ることで,MFIゼオライトの1次粒子間にCu微粒子が固定化された,ゼオライト内包Cu触媒(以降,Cu@MFIと略す)を得た.特に,Cu源には,CuとSiO2の層状複合酸化物であるCuフィロシリケートを用いている点に特徴がある. 窒素吸着測定とXRD測定によりMFIゼオライトの結晶成長が十分に進んでいること,およびTEM観察によりCuの固定化状態と粒子サイズを明らかにした.具体的には,Al添加量を変化させることにより,Si/Al比=80,150,200∞(Alフリーのシリカライト)のMFIゼオライト内に,粒子サイズが3~4nmで均一なCu微粒子が内包された触媒の調製に成功した.以上により,触媒活性評価に重要となるCu粒子サイズはほぼ同一で,Si/Al比のみが異なるCu@MFI触媒の開発に成功した. CU@MFI触媒の表面特性評価として,水蒸気吸着法と二酸化炭素昇温脱離法(CO2-TPD)を実施した.Alの添加量が増加するにしたがい,触媒の親水性が向上することが明らかとなった.また,CO2-TPDにより,CO2のCuへの吸着とゼオライトへの吸着をそれぞれ測定可能であることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二酸化炭素の水素化活性を評価するためには,担体であるMFIゼオライトの表面性質(Si/Al比に依存する親・疎水性)とは独立してCuの微粒子を固定化する必要がある.さらに,Cu微粒子の耐熱安定性の向上のために,多孔質担体に内包させることが望ましい.これに対して,2023年度では,Si/Al比の異なるMFIゼオライト粒子内に,粒子サイズが3~4nm程度でほぼ均一なCu微粒子の固定化に成功した.さらに,ゼオライトの結晶性評価とCuの粒子サイズ評価に加えて,水蒸気吸着法による触媒の親・疎水性の評価,およびCO2-TPD法によるCO2吸着性の評価が可能であることを明らかにした.特にCO2-TPD法では,CO2の総吸着量のうち,触媒金属成分であるCuへのCO2の吸着量と担体であるゼオライトへのCO2の吸着量を定量的に評価可能である.Si/Al比の異なるMFIゼオライトを担体とし,同ゼオライト内にCu微粒子を固定化した触媒を用い,CO2の水素化による合成ガス製造実験を実施した.その結果,Si/Al比がCO水素化活性とCO選択性に影響することを明らかにした.
以上のように,今後の活性評価に必要となる触媒と触媒調製法,および触媒の評価法を確立することができた.またCO2の水素化反応試験において,触媒表面特性の差異が水素化活性と生成物選択性に及ぼす影響を定量的に評価できることを実証した.したがって,おおむね順調に進んでいると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,Si/Al比が異なるMFIゼオライトに対し,その粒子内に1wt%のCu微粒子を内包させた触媒(Cu@MFI)の調製に成功している.今後は,以下の触媒調製,触媒分析,触媒反応試験を予定している. 触媒調製:Si/Al比の異なるMFIゼオライトへ内包させるCuの担持量を0.5~5.0 wt%の範囲で検討し,Cu粒子サイズと熱安定性の関係を明らかにする.また,カチオン種(アルカリ金属)の異なる触媒を調製し,カチオン種が二酸化炭素の吸着性に及ぼす影響を明らかにする. 触媒分析:CO2の水素化反応では,原料であるCO2と生成物であるCOの吸着性が重要である.さらに,Cu微粒子の(金属Cu)/(酸化物Cu)の比は,CO2の水素化活性,およびCO2とCOの吸着性に影響すると考えられる.Cuの金属/酸化物の比は,昇温還元(TPR)法により定量する.また,CO2―TPD法により,Si/Al比とCu担持量がCO2の吸着性に及ぼす影響を明らかにする.一方,CO吸着法により,生成物であるCOの吸着量を定量する. 触媒反応試験:低温度域での活性化と平衡制約を脱却したCOの選択生成に対して,上記で得られたアルカリ金属イオン交換Cu@MFI触媒を用いる,広範囲濃度のCO2(分圧1.0×10-3~2.0×10-2 MPa)に対し,H2/CO2=3.0,反応温度250~400℃の条件下で,CO選択合成を実施,速度論と平衡論の観点から触媒性能を評価する.さらに,含侵法でCuを担持したCu粒子(20nm以上)と内包構造のCuナノ粒子それぞれのCO2吸着量を定量し,CO選択合成とCH4生成抑制のメカニズムを実験的に実証する.
|