研究課題/領域番号 |
23K17857
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳田 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50420419)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ナノワイヤ / 人工嗅覚 / ガスセンサ / 人工嗅覚デバイス / 金属酸化物 / ナノ構造 / センサ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では頑強な分子認識イオン固体表面に立脚して、堅牢性と分子認識性の両立を実現し、大気雰囲気・高温の過酷環境で長期間に渡って機能する堅牢な人工嗅覚デバイスを実証することに挑戦することを目的とする。従来研究では注目をされてこなかった疎水性分子と親水性イオン固体表面間相互作用に立脚した新しい堅牢な人工嗅覚デバイスを創製する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来研究では着目されてこなかった疎水性分子と親水性イオン固体表面間相互作用を利用することで、堅牢性と分子認識性を両立した人工嗅覚デバイスを開発することである。2023年度、申請者はこの目的を達成するために、主に3つのアプローチで研究を進めた。第一に、酸化亜鉛ナノワイヤの単一結晶面(m面)の利用である。炭素鎖の異なる揮発性直鎖ケトン・アルコール・アミンを対象として酸化亜鉛ナノワイヤ表面への吸着特性を水晶振動子マイクロバランス(QCM)によって評価したところ、いずれの官能基を有している場合でも、炭素鎖の上昇(C7-C10)に伴う顕著な吸着量増加が見られ、疎水性アルキル鎖と親水性酸化亜鉛表面間の相互作用の吸着への重要性が示された。また、直鎖カルボン酸を対象とした場合、炭素鎖長の違いに依存して、酸化亜鉛への吸着量が最大となる温度が変化することをガスクロマトグラフ質量分析(GCMS), 赤外分光(IR), QCM測定などを利用して見出した。これらの結果は、分子シミュレーションともよく一致していた。第二に、上記の酸化亜鉛ナノワイヤの表面を原子層堆積法(ALD)によって様々な金属酸化物でコーティングし、有機分子との相互作用を制御するアプローチである。まだ始動段階であるが、金属酸化物の酸性度と共に、親水性が有機分子との相互作用を制御する重要な因子であることを示唆する結果が得られつつある。第三に、酸化物ナノ構造表面に対象分子を固定化した状態で、ALD法により酸化物シェル層を原子層レベルで堆積し、堅牢な分子鋳型を作製するアプローチである。2023年度、この酸化物シェル層の堆積過程をQCMによるその場観察やIR測定を利用して追跡することによって、適切な条件を見つけるための礎を築くことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのアプローチを利用することで、本研究の目的である「従来研究では着目されてこなかった疎水性分子と親水性イオン固体表面間相互作用を利用することで、堅牢性と分子認識性を両立した人工嗅覚デバイスを開発すること」を部分的に達成しつつある。従って、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、酸化亜鉛ナノワイヤの単一結晶面(m面)を利用した有機分子の吸着において、疎水性アルキル鎖と親水性のイオン性固体表面間の相互作用の重要性を示唆する結果が数多く得られている。一方、酸化亜鉛以外の酸化物への有機分子吸着に関する知見は未だ不十分であり、酸化物のどのような性質(酸性度・親水性・結晶構造・イオン半径)が有機分子の吸着と関連するか明確にわかっていない。今後、前年度に始動した多様な酸化物表面を利用した有機分子吸着実験に注力することで、イオン性固体表面と疎水性有機分子間の相互作用について理解を深め、体系化する。ここで得られた知識を生かして、堅牢な分子鋳型作製における、下地及びシェル層の酸化物やターゲット分子を選定する。最後に、得られた材料をセンサや吸着剤として活用し、組み合わせて用いることで、堅牢性と分子認識性を両立した人工嗅覚デバイスの作製を行う。
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