研究課題/領域番号 |
23K17873
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
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研究分担者 |
冨田 成夫 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30375406)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 水素顕微鏡 / 透過弾性反跳検出法 / 水素分析 / マイクロビーム / Heビーム |
研究開始時の研究の概要 |
エネルギーが8~10 MeVのHeによる水素の弾性反跳は,前方方向の弾性反跳断面積が通常より2桁程度増加する特徴がある。この特徴を活かした高エネルギーHeビームによる透過弾性反跳検出法を用いることで,試料厚さ0.2 mm程度までの深さ方向の水素分布が,数μmの位置分解能で検出可能となる。更に,マイクロビーム技術とビーム掃引法を組み合わせることで,水素分布の3次元構造をその場観察できる計測システムが構築できる。本研究課題では,水素劣化プロセスと機能発現メカニズムをマイクロスケールで解析する「オペランド水素顕微鏡」の原理実証を試みる。
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研究実績の概要 |
8~10 MeVのHeビームによる水素の弾性反跳は,前方方向の弾性反跳断面積が通常より2桁程度増加する特徴がある。この特徴を活かした高エネルギーHeビームによる透過弾性反跳検出法(T-ERDA)を用いることで,厚さ0.2 mm程度までの試料中の深さ方向の水素分布が,数μmの位置分解能で検出可能となる。更に,マイクロビーム技術とビーム掃引法を組み合わせることで,水素分布の3次元構造をその場観察できる計測システムが構築できる。 筑波大学の構造材料用マイクロビーム装置は,6MVタンデム加速器の0°ビームライン(L3コース)に設置されている。Oxford Microbeams製OM-2000を用いて,8~10 MeVのHeビームについて,1.5μm程度のビーム集束径を達成した。T-ERDAによる水素原子の検出では,PPS [(C6H4S)n]フィルムとAlやNi箔を重ねた積層模擬試料に対して試験測定を実施した。水素分布の深さ方向に対して,表面から深さ10μmでは,1μm程度の位置分解能を得ており,水素原子の検出感度は ~10 ppm程度と推定された。実試料を想定した水素チャージによるアルミニウム圧延板に生じた水素ブリスターの測定では,8 MeVのHe2+ビームを使用した。平均のビーム電流値は80 pAであった。試料の照射領域は250×250μm2 (空間分解能 3.5μm)の範囲で,深さ12μmまでの水素原子の3次元分布の測定検証を試みた。測定結果として,数μmサイズの水素バブルに存在する水素原子密度を測定することができた。本研究成果から,水素劣化プロセスと機能発現メカニズムを解析可能なオペランド水素顕微鏡の開発促進が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エネルギーが8~10 MeVのHeビームを用いた透過弾性反跳検出法(T-ERDA)により,水素の3次元構造の測定検証を実施することができた。水素の検出感度として ~10 ppm程度を得ており,深さ12μm程度までは深さ方向分解能として1μmとなっている。 以上の研究進捗状況から,研究開発目標に向けておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロビーム技術とビーム掃引法を組み合わせることで,物質中の水素原子についてマイクロスケールでの3次元分布をその場観察できる計測システムの実用化を推進する。これまでの研究成果から,高エネルギーHeビームによる透過弾性反跳検出法は,水素だけではなく重水素の検出も可能であると分かった。本研究手法の発展として,水素同位体分析への適用も考える。
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