研究課題/領域番号 |
23K17879
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
細井 優 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (00824111)
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研究分担者 |
松浦 康平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40906153)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 歪み制御 / 誘電体共振 / マイクロ波表面インピーダンス / 誘電体共振器 / マイクロ波 / 表面インピーダンス測定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,歪み制御下でマイクロ波共振を利用した超伝導体の複素伝導度測定を行う新しい物性プローブの開発を目指す.この歪み制御とマイクロ波共振の両者が組み合わさるハイブリッドシステムが実現すれば,超伝導準粒子の歪み応答を調べることが可能となり,鉄系超伝導体においてその存在が示唆されるネマティック量子臨界点を観測する決定的な手がかりを与える.さらに,ネマティック量子ゆらぎが与える超伝導準粒子への影響も評価できることが期待でき,鉄系超伝導体の発現機構の理解を飛躍的に向上させることが期待される.
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研究実績の概要 |
鉄系超伝導体などでは電子状態が異方性を示す電子液晶状態が,その非従来型超伝導の発現機構において重要な役割を担っていることが期待されている.このような電子液晶状態を調べる上で重要な物理量がネマティック感受率であり,電気抵抗率の歪み応答から実験的に評価することが可能である.しかしながら,このネマティック感受率は常伝導相の電子液晶性の揺らぎを調べるのに有用である一方で,電気抵抗率がゼロになる超伝導相で実際にどれほど電子液晶性の揺らぎが発達しているかどうかを評価することができない.そこで超伝導相でも有限の値を有する表面インピーダンスに着目をした.この表面インピンーダンスは超伝導準粒子励起に非常に鋭敏なプローブと知られており,その歪み応答を調べることができれば,超伝導状態に中でもネマティック感受率を定量評価できる可能性が期待できる. 本研究では,マイクロ波共振器と歪み制御を組み合わせた従来にない新しい物性測定系の開発を目指している.本年度はまずマイクロ波共振を歪み制御装置内で観測する手法を確立させることに取り組んだ.なお,マイクロ波の共振には高いQ値を有する誘電体を利用した.この誘電体を歪み制御装置内に配置し,マイクロ波を入射した際の透過スペクトルを観測することにより,マイクロ波の共振を観測できる手法を確立させた.さらに試験試料として鉛片を導入し,その共振周波数の変化を観測できており,歪み制御装置内でのマイクロ波共振を利用した表面インピーダンス測定の手法を確立させるところまで達成している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は歪み制御装置内でマイクロ波共振器を用いて金属の表面インピーダンス測定に成功している.現在は冷凍機にそれらを搭載する準備を進めており,まもなく低温環境下における測定ができる段階まで到達しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は測定系の精度を上げる改良を行う予定である.そのためにまずは超伝導状態ではなく,常伝導相のネマティック感受率をマイクロ波表面インピーダンスを利用して測定を行う.これと従来の電気抵抗から見積もるネマティック感受率と比較することが可能であり,本研究で開発した新しい測定系の有用性を評価することができる見通しである.これらの測定を通じて,測定系の最適化も行い,超伝導状態の表面インピーダンスの歪み依存性の測定に移行する予定である.
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