研究課題/領域番号 |
23K17880
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 洋一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70756460)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 走査型プローブ顕微鏡 / 質量分析イメージング / 振動エネルギー / 精密制御 / 質量分析 / イメージング / 走査型プローブ / 顕微鏡 / 細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞では、生命活動に必要な代謝反応が高効率に進行する。細胞を構成する複数分子の一斉分析技術は、生命科学分野の基礎理解と応用の両面で重要である。質量分析イメージング法は、試料中の化学成分の分布を可視化できる特徴を有するが、空間分解能が低いことが課題である。本研究では、研究代表者がこれまでに開発してきた、走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法を高度化し、フェムトリットルの溶媒を用いた抽出―イオン化法を開発する。微小液体の動的変化を物理化学的に理解し、制御することで、1細胞の成分分布を高精細に可視化することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、独自技術である抽出―イオン化技術(t-SPESI、タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法)を高度化し、微量溶媒のエネルギー変化をキャピラリプローブの振動変調の観点から解明する。1マイクロメートル以下の領域で試料成分の抽出とイオン化を実施するためのフェムトリットル溶媒の精密制御法に挑み、一細胞高精細イメージングの実現を目指す。 2023年度は、t-SPESIで質量分析イメージング(MSI)を実施する際の、プローブ振動(振幅及び位相)の動的変化の計測システムを開発した。MSIでは、共振状態のプローブが、試料から離れた位置から、プローブ先端が試料と接触する位置まで移動する。プローブが試料と断続的に接触する状態で、帯電した微量溶媒がプローブ先端から試料表面に供給され、局所的な試料成分の抽出とイオン化を高速に行う。 新システムを用いて、試料間の距離を経時的に減少させ、自由振動状態からプローブが試料と接触するまでの間の振動振幅及び位相を計測した。プローブの振動周波数を共振周波数、およびそれらから増減した周波数の3条件とし、溶媒に印加する電圧を正負の2条件とした。ガラス基板上のマウス脳組織切片に対して計測を行った結果、プローブが試料と接触するまでの期間において、振動振幅と位相が計測条件により変化することを見いだした。特に、正イオンモードの高周波数振動条件下において、プローブが試料に近接する場合に振幅の顕著な減少が生じた。本結果は、プローブ先端と試料表面の間の静電引力により、共振周波数の減少が生じることを示唆する。一連の計測の結果から、正イオンモードと負イオンモードのMSIを同一のプローブで実施する場合には、振動周波数を共振周波数から減少させることが有効であり、これにより、プローブを試料表面に安定的に近づけることができることが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
t-SPESIでは、微量溶媒への力学的・電気的摂動によって、抽出とイオン化が時空間的に分離され、連続的に実施される。この過程では、①表面張力や、溶媒と抽出物の溶媒和による微量溶媒の安定状態(液架橋)が、②プローブ振動や高電圧印加による力学および静電エネルギーの付与により、高エネルギー状態に遷移し、③抽出された成分が気相イオンへと変換される。液架橋の形成―破断とエレクトロスプレーによる抽出液の揮発に伴うエネルギー変化により、プローブへの応力が生じ、振動エネルギーの散逸などの振動状態の変調を生じると考えられる。2023年度は既存の計測システムを改良し、新たな計測システムを開発した。一連の計測実験の結果、t-SPESIのMSIに有効な計測条件とその物理学的描像を把握することができた。また、2024年度の研究に用いる新型t-SPESIユニットの設計を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、抽出領域の微小化に必要となる、フェムト溶媒へのエネルギー変調のために重要な物理パラメータを明らかにすることを目的とする。微小化領域の抽出―イオン化の様子を理解するために、プローブ先端部分のフェムト溶媒の状況を可視化することが重要である。2024年度は、第一四半期に新型t-SPESIユニットの動作検証を進め、その後は、先端開口部が1マイクロメートル以下のプローブを用いて、液架橋の力学伸張(振動周波数・振動振幅)、溶媒の電荷蓄積(印加電圧)、および溶媒の物理化学的性質と送液速度が、振動エネルギーの散逸と抽出領域の大きさに与える効果を系統的に調べる。
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