研究課題/領域番号 |
23K17891
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (00400424)
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研究分担者 |
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (80746751)
鈴木 敦子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (10633464)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | スカンジウム / 抽出法 / 化学挙動 / 沈殿分離 / 希土類残渣 / トリウム / 抽出分離 |
研究開始時の研究の概要 |
スカンジウム(Sc)は強度向上のためのアルミ合金への添加材等として重用されている。このScが希土類鉱石の製錬残渣のうち、トリウム(Th)を主成分とする残渣に多く含まれることに着目した。現在、Thを含む希土類鉱石の製錬残渣は資源国に大量に発生しているが、放射性物質を多く含むことから、世界中でアンタッチャブルな迷惑物とされ、多額の処分コストが発生している。ここから高価値なScを産出することができれば、非常に高い経済性を持つSc資源供給を実現することができる。そこで本研究では、いくつかのThやUを含む希土類鉱石の製錬残渣からScの単離に挑戦し、より単純で簡易な方法でのSc抽出法構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は研究初年度として、スカンジウムの資源量や現在産業界で実施されているスカンジウム抽出プロセスの調査を実施した。その結果、地殻中の平均含有量は22ppmと金や白金よりも多いながら、極めて稀にしか産出しない鉱物であり、資源全体としては地殻中に薄く、広く分散状態で存在している事が分かった。現在スカンジウムのみを稼業対象とする鉱床は無く、タングステン鉱石やラテライト型ニッケル鉱石等の精錬屑から副産物として回収するプロセスが主流であることが分かった。これらの湿式処理プロセスが行われている溶液条件や、スカンジウム、ランタノイド、ウラン、トリウム等のイオンの既存の平衡定数等をもちいて化学種平衡計算を行い、スカンジウムと随伴が予想されるカチオンの沈殿挙動、溶媒抽出挙動等を比較した結果、スカンジウムは一般的に行われている希土類処理プロセスでは3価カチオンとなるランタノイド元素群よりもむしろ4価カチオンとなるトリウムと一緒に移行傾向が高いことが判明した。この傾向は、3価カチオンとしてはイオン半径の小さいスカンジウムイオンと、4価カチオンとしてはイオン半径の大きいトリウムイオンの有する相対電荷密度の関係から解釈が可能なことが分かった。この相対電荷密度の両イオン間の釣り合いの結果、水溶液中の水和数もスカンジウムイオンとトリウムイオンは非常に近い値となる事も分かった。 さらに、次年度以降のスカンジウム分離実験のための準備として46Sc放射性トレーサーの合成と精製を行った。ここでは、天然同位体組成のチタンに7%含まれる47Tiを電子線直線加速器を用いて発生させた制動放射線で照射することにより光核反応を起こして46Scを製造した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度実施すべき文献調査が完了し、平衡定数決定や分離挙動検討のための46Sc放射性トレーサーの製造等が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
既存のスカンジウム処理プロセスでの基本となる液性である塩酸系や硫酸系でのスカンジウムのイオン形の確認を行うために、必要となる錯生成定数の確認を実験により行う。そのうえで、スカンジウムをトリウム等から選択的に分離するための沈殿剤を見出し、必要に応じて合成し、沈殿分離を試みる。さらに、希土類鉱石やその精錬残渣等を溶解し、そこからスカンジウムの単離を試みる。
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