研究課題/領域番号 |
23K17892
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
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研究分担者 |
村上 力輝斗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30963665)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 超臨界地熱発電 / 耐食性合金 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国は豊富な地熱資源を有し、高い地熱発電のポテンシャルを有しているが、強酸性坑井におけるケーシングパイプ等の腐食の問題により、地熱資源の利用は制限されている。特に大深度の高温高圧環境における超臨界地熱発電を目指す上で、耐食性部材の開発が課題であった。本研究では、従来の研究を通じて見出されたRu系合金に注目し、高い耐食性と機械的強度、低コスト性を兼ね備える新規Ru系合金を開発することを目的とする。
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研究実績の概要 |
活火山数が世界第3位の火山大国である日本は、世界でもトップレベルの地熱資源ポテンシャルを有している。中でも高温高圧状態にある超臨界地熱資源では、さらに大出力の発電が可能であり、温室効果ガス排出量の大幅な削減に貢献することが期待されている。一方で、超臨界水は400~500℃に達する強酸性流体であり、直接・間接採熱方式のそれぞれにおいて、耐熱・耐腐食性の部材(ケーシングパイプ等)の開発が必須とされている。従来IrやRhといった貴金属元素の超臨界水に対する耐食性が良好であることが報告されていたが、価格や機械的特性の点で課題があった。本研究では、貴金属の一種であり比較的低コストであるRuを含む合金系に注目し、耐食性と機械的特性を両立する合金の開発を行っている。 本年度は、Mo、W、および第4元素による合金化効果に注目し、試作を行った。Ruを含む合金はしばしば脆性であるが、プラズマ溶融-急冷法および高速な形状制御結晶成長法であるDewetting μ-PD法を用いて成形することで、良質なサンプルを迅速に得ることが可能である。得られた試料は、いずれもステンレスに比べ高いビッカース硬度(~800 HV)を示し、短軸引張試験において、500 MPa以上の引張強度、約20~80%の破断伸びを示した。また塩酸、加熱硫酸等の無機酸に対して優れた耐食性(<0.2 mm/年)を示したほか、400℃、30 MPaの超臨界水に対してもほぼ腐食しない挙動が得られた。今後、Ru濃度低減を目指した組成探索を行うほか、有望組成についてはDewetting μ-PD法によって合金線材を作製することにより、レーザークラッディング法によるステンレス基板上への成膜を行い、実用水準に近い表面改質材での評価を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、超臨界地熱発電における過酷腐食環境に耐える新規合金開発を実施している。本年度はMo, Wおよび第4元素を含む複数のRu合金について結晶試料を作製し、機械的特性および耐食性を評価した。いずれの試料も、塩酸、加熱硫酸等の無機酸に対して高い耐食性を示したほか、400℃、30MPaの超臨界水に対しても腐食しない挙動が得られた。ターゲット組成における優れた耐食性が得られており、機械的特性を両立する組成の探索を引き続き実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
現在はRu濃度を固定して合金元素濃度を変化させた群においてスクリーニングを実施し、耐食性と機械的特性に優れる合金組成を見出している。今後、Ru濃度低減を目指した組成探索を行うほか、有望組成についてはDewetting μ-PD法によって合金線材を作製することにより、レーザークラッディング法によるステンレス基板上への成膜を行い、実用水準に近い表面改質材での評価を行っていく。
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