研究課題/領域番号 |
23K17899
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 電荷移動錯体格子 / 分子内水素結合 / ホストーゲスト相互作用 / ゲスト誘起電荷移動 / ガス吸着 / 磁気相変換 / 水車型ルテニウム二核錯体 / TCNQ誘導体 / 多孔性錯体格子 / 細孔内水素結合 / 電荷移動 / ゲスト誘起磁気相変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ホストーゲスト間水素結合形成を電荷移動トリガーとする電荷移動可変多孔性磁石を開発することを目的とする。高度な生体系システムに倣い、“物質認識→物質輸送(拡散)→物質活性認識→格子情報伝達→格子酸化還元変化(信号発信)”からなる一連の物質情報伝達システム(化学―物理情報変換システム)を“多孔性分子格子”に擬似し、物質情報伝達過程の「物質活性認識→格子情報伝達」に“水素結合認識”を組み込むことにより、未だ報告例のない、ゲストの水素結合ナノ空間における安定性の違いにより格子内電子移動のON/OFFを制御する磁気スイッチを実現し、ゲスト誘起格子内電子移動による新しい相変換機構を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ホストーゲスト間水素結合形成を電荷移動トリガーとするゲスト誘起可変多孔性磁石を開発し、ゲスト誘起格子内電子移動による新しい相変換機構を提案する。オルト位にOH置換基を有する安息香酸架橋ルテニウム二核(II,II)錯体(o-OH-[Ru2])のHOMOエネルギーレベルは、オルト位にOH置換基とカルボン酸酸素原子間の分子内水素結合が強く関わっていることを当研究室で見出している(Dalton Trans. 2022, 51, 85)。すなわち、o-OH-[Ru2]を電荷移動ユニットに使用した場合、この水素結合形成や水素結合への摂動は、HOMOレベルの調整に寄与すると予想され、動的なHOMOレベル制御の新たなトリガーとして有効であると考えられる。本研究では、o-OH-[Ru2]錯体とTCNQ誘導体について、置換基を換えることによりそれぞれ電子ドナー能とアクセプター能を調整し、それらの2:1組成比からなる層状集積体(D2A型と略記)を合成する。各種ゲストの吸脱着による格子内外の水素結合形成を変えることでo-OH-[Ru2]錯体のHOMOレベルを動的に調整し、格子内電荷移動を誘起して磁気相を変える。本年度は、新規D2A型集積体を合成し、その脱溶媒構造の安定性を調べることを目指した。その結果2種の化合物を合成することに成功したが、極めて興味深いことに、どちらも脱溶媒により電荷移動を起こして磁気相転移することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予想通りのD2A型二次元層状化合物を得ることに成功し、且つ脱溶媒のみで電荷移動を起こして常磁性体―フェリ磁性体変換する化合物を見出すことに成功した。現在2種の化合物を合成しているが、驚くべきことに、用いるユニットのHOMO/LUMOレベルを制御することで(実際は、o-OH-[Ru2]錯体を固定し、TCNQ誘導体を換えた)、2種の化合物は同様なD2A型であるにも関わらず、電荷状態の安定化が溶媒和で異なっていた。一方は、2電子移動型から1電子移動型への常磁性体―フェリ磁性体変換であり、もう一方は、1電子移動型から中性型へのフェリ磁性体―常磁性体変換という、全く異なる電荷状態間の変換を見出すに至った。今後詳細を明らかにしていくが、極めて興味深い磁気変換であろう。
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今後の研究の推進方策 |
上記2種類のD2A化合物の溶媒脱着による磁気変換を解明する。既に全ての溶媒和と脱溶媒和状態の構造が得られているため、その構造を基に計算化学による電荷移動機構の解明を行う。また、脱溶媒化合物の各種ガス吸着挙動を測定し、in situ測定による電荷移動過程の解明を行う。 各ユニットは多種多様にあるので、それらの組み合わせによる集積反応を網羅し、新しい電荷移動系を開発する。
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