研究課題/領域番号 |
23K17914
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大井 貴史 名古屋大学, 工学研究科(WPI), 教授 (80271708)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ラジカル / ラジカルイオン / 不斉合成 / 分子触媒 / 分子認識 |
研究開始時の研究の概要 |
静電的な相互作用などの非共有結合性の相互作用を利用したイオン性化学種の反応性や立体化学の制御とは全く異なり、ラジカル種の発生および結合形成の各段階を制御するための信頼性と汎用性を備えた触媒的な方法論はほとんど確立されていない。本研究では、水素原子移動触媒と基質認識を担う分子触媒に電荷を附与しイオン対型ラジカル触媒を組み上げるという戦略に基づき、C(sp3)-H結合の切断を起点とした選択的な分子変換法を開拓する。
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研究実績の概要 |
ラジカル種を利用した分子変換法の開発が近年盛んに行われているが、ラジカル種の発生および結合形成の各段階の制御を同時に担う触媒システムの開発は依然として困難な課題である。本年度は、水素原子移動(HAT)触媒と基質認識を担う水素結合アクセプターあるいは水素結合ドナーに電荷を附与したイオン対型ラジカル触媒を組み上げるという戦略にもとづき、選択的ラジカル反応の実現に向けた端緒となる知見を得た。具体的には、イオン部位をもたない単純なケトン型HAT触媒ではほとんど反応性が見られない第二級アルコールのα-C(sp3)-H結合の開裂を起点としたラジカル付加反応において、触媒にスルホナートなどの弱配位性のカウンターアニオンを有する第四級アンモニウム構造を導入することで反応が大幅に加速されることを見出した。この加速効果は、非配位性アニオンがアンモニウム部位との静電相互作用によりHATに関与するカルボニル基近傍に近づけられることに加え、基質のアルコールとの水素結合を介してα-C-Hの結合解離エンタルピーを低下させる協創的な役割を担うことによると現時点では想定しているが、詳細な作用機序に関してはイオン部位の構造についてのさらなる検証が必要である。一方で、同様の触媒作用が働くと期待されるキラルなカウンターアニオンを用いて反応を行った際には収率の大幅な低下が見られ、立体選択性の獲得に関しては依然として課題が残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン対型HAT触媒を用いることで第二級アルコールのα位C-Hから生じたラジカルの電子欠損オレフィンへのラジカル付加が著しく加速されることを見出しており、当初の想定通り静電相互作用と水素結合の協働的な作用によりHATを起点としたラジカル反応を制御するための第一歩と考えている。目的として掲げた立体制御が依然大きな課題として残されているが、研究代表者らが保有するキラルカチオンおよびキラルアニオン触媒の特徴を活かした多角的なアプローチにより実現への道筋をつけて行きたい。一方で、申請書に記載した位置選択性の制御に関しては、所望の選択性を発現する触媒システムの発見には至っておらず、基質の選定をはじめとした根本的な戦略の見直しを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
イオン対型ケトン触媒によるHATを起点としたアルコールの電子欠損オレフィンへのラジカル付加反応を引き続き推し進める。HATを担うカルボニル基周辺の立体環境が反応の効率に大きな影響を与えるという今年度の研究で得られた知見のもと、触媒に導入するイオンの構造や置換位置、反応点からの距離などを検証するとともに、触媒との相互作用を高めることを意識した基質の構造修飾を試みる。さらに、イオン性キラル有機分子触媒の評価を系統的に行い、立体選択性の制御を実現する。また、同様の戦略によって位置選択性の制御を目指す上で最適な基質構造の探索を進める。
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