研究課題/領域番号 |
23K17917
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
光藤 耕一 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (40379714)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | プロペラ型ヘテロアセン / プロペラン / ヘテロアセン / カルベン / ヘテロチエノアセン |
研究開始時の研究の概要 |
新たな電子デバイス、例えば軽くて持ち運び容易な電子ペーパーや、軽くて柔らかいウェアラブルデバイスなどの実現には、より性能に優れた全く新しい有機半導体の開発が強く望まれる。本研究は、優れた分子特性の発現の為の全く新しいアプローチとして、芳香族性を有したまま、固体状態での高い分子配向を可能とするこれまでにない三次元的な立体構造の構築をめざし、対称性の高いプロペラ型構造を持つ新規分子の構築に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、三次元構造を有する芳香族性の機能性分子としてプロペラ型分子に着目し、「シクロプロパン環が縮環した新規プロペラ型ヘテロアセンを合成し、その物性を解明すること」である。シクロプロパン環はsp3炭素で構成されるにもかかわらず、その歪んだ構造から疑似π結合性と芳香族性(σ芳香族性)を持つことが知られる。 共役系と芳香族性を保ちつつプロペラ型分子を構築するには、多環芳香族中の二重結合にシクロプロパン環を縮環すればよいと考え、本研究に着手した。このようなプロペラ型分子(プロペラン)の合成研究の先行研究として、反応性の高い二重結合部位にジブロモカルベンを作用させる手法が報告されているが、適用できるのは非芳香族か歪んだ芳香環に限られ、その物性も不明だった。 そこで、母骨格となるヘテロアセンとしては、高い半導体特性を有することが分かっているベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(BTBT)とベンゾフロ [3,2-b]ベンゾフラン(BFBF)を用い、BTBTまたはBFBFにジブロモカルベンを作用させたところ、想定通り、シクロプロパン構造を有する新規プロペラ型ヘテロアセンを構築することに成功した。また反応後、還元することで、脱ハロゲン化した新規プロペラ型ヘテロアセンを得るこのにも成功した。得られた分子群については全て結晶構造解析にも成功しており、期待した通り、密なパッキング構造を有する事を明らかとするとともに、分子間の移動積分も算出し、高い分子間電子伝導が期待できることも見いだした。紫外可視光吸収スペクトルや電気化学的特性評価とDFT計算・ACID計算なども行い、新規プロペラ型ヘテロアセンが期待通り、芳香族性を示すプロペラ構造体である事を示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書にて提案したベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(BTBT)とベンゾフロ [3,2-b]ベンゾフラン(BFBF)を母骨格とする新規プロペラ型ヘテロアセンを構築することに成功し、その基本的な光学的・電気化学的特性を明らかとした。 測定して得られた物性値は計算科学的な予測値と良い一致を示し、当初期待した通り、シクロプロパン環が縮環した構造をとることで、芳香族性を維持したままヘテロアセン構造を曲げることに成功したことを示唆している。 得られた誘導体については全て結晶構造解析にも成功し、その構造を確認すると共に、重なり積分も算出し、高い電子移動特性も期待されることもわかった。また、得られる分子群は全てキラル分子であるが、これら生成物を光学分割する条件も見いだした。研究計画は極めて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた新規プロペラ型ヘテロアセンを用いて有機電界効果トランジスタの作成を試みたが、残念ながら、蒸着プロセスに問題があった。そこで、溶液プロセスによるデバイス作成にも取り組んでいるが、現在のところ、デバイス特性の発現には至っていない。これは膜形成の条件に問題があると考えられるので、膜形成条件を精査する。 これまでに得られている新規プロペラ型ヘテロアセンを光学分割できる条件はすでに明らかとしているので、この条件下光学分割に取り組んでいる。令和6年度は得られたエナンチオマーの円偏光特性を明らかにすると共に、結晶構造解析を行い、ラセミ体とのパッキング構造の違いを明らかとする。 また、今後は、有機電界効果トランジスタとして用いるために、よりπ拡張された新規プロペラ型ヘテロアセンの合成に取り組む。π拡張する手法としては、①すでに構築したプロペラ型ヘテロアセンを修飾してπ拡張する手法と、②π拡張したヘテロアセンにカルベンを作用させてシクロプロパン化する手法の二通りの方法でアプローチする。前者については、π拡張はされるものの、シクロプロパン環が開環してしまう、という問題も発生しているので、この開環体の閉環によるπ拡張体の合成も並行しておこなう。
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