研究課題/領域番号 |
23K17934
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
草本 哲郎 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (90585192)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | ラジカル / 配位高分子 / 結晶 / 分子結晶 / カゴメーハニカム格子 / 薄膜 / スピン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、化学的に安定な、カゴメ-ハニカム格子構造と呼ばれる幾何学構造を有する超薄膜結晶(=厚みが単分子層~数分子層の結晶)を創製する。既存の無機超薄膜結晶や原子層物質では実現困難な物質・スピン構造を多様に構築し、これまでにない磁気的性質の実現を目指す。超薄膜結晶を得るための手法の確立は、磁性のみならず、電子物性、光学特性、機械特性等の物理特性の精密評価をも可能にし、二次元物質のナノサイエンスと応用科学に大きな発展をもたらすことが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、不対電子スピンを有する有機配位子であるラジカル配位子と金属イオンにより構成される超薄膜結晶性の配位高分子の創製に挑戦する。既存の原子層物質には見られない、カゴメ-ハニカム格子構造などの幾何学格子構造を多様に構築し、それらの物性を明らかにすることで、二次元物質の物性研究分野に新たな発展をもたらすことを目的とする。本年度は主に以下の二つを遂行した。 (1)本研究遂行の基幹物質である、三角形型ラジカル配位子を合成した。この配位子は三つのピリジル基を有しており、金属イオンとの配位結合形成によりハニカム格子およびカゴメーハニカム格子構造の形成が可能である。ジクロロピリジンを出発原料とする四段階の化学反応により、目的物質を得ることができた。 (2)二つの白金イオンをベンゼン環のパラ位にもつリンカー分子と三角形型ラジカル配位子からなる配位高分子の合成に挑戦した。このリンカー分子を用いれば、ラジカル配位子同士を直線的につなぐことが可能となり、ハニカム格子構造の構築が期待できる。さらにリンカー分子のベンゼン骨格をビフェニル骨格などの他の化学骨格に変えることで、格子サイズの異なる種々のハニカム構造が構築できると予想される。ラジカル配位子とリンカー分子を様々な有機溶媒中で混合し、得られた固体の組成や電子状態について、質量分析ならびに各種分光測定により調査した。その結果、配位子と白金イオン間に配位結合形成にともなう錯形成反応が進行すること、一方で得られた物質の電子状態は予想していたものとは異なる可能性が高いことを見出した。 (3)三角形型ラジカル配位子とニッケルイオンを有機溶媒中で混合することで結晶性固体が得られることを見出した。予備的な構造解析の結果、この固体がカゴメ-ハニカム格子構造を有する新規な配位高分子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属イオン種の異なる二種類の配位高分子合成に挑戦し、目的とするカゴメーハニカム格子構造を有する可能性が高い新しい物質の合成に成功したことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
得られた物質の構造、物性、電子状態を実験的および計算科学的手法により解明する。ニッケルイオンを含む物質については、構造を精密に決めるとともに、磁性などの物性測定に着手する。また超薄膜結晶を得るために、トップダウンおよびボトムアップ的な様々な物質合成手法に取り組む予定である。白金イオンを含む物質については、予想される配位高分子の構造の繰り返し単位構造に該当するディスクリートな金属錯体を新たに合成し、その構造-電子状態-物性を調査する。これにより、予想と異なる電子状態がどのような電子状態なのか、を明らかにする予定である。
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