研究課題/領域番号 |
23K17942
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 隆行 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20705446)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ヘテロ元素 / フラーレン / 電子受容性材料 / 蛍光 / 燐光 / 非平面構造 / アザヘリセン / ヘテロ元素ドープフラーレン / 等電子構造 / Friedel-Crafts反応 / フラーチューブ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、コラニュレンの五重アミノ化体を出発物として、ジアゾ架橋反応を用いた二量化により半球を2つ繋ぎ合わせた檻状化合物を作り、そこにボラフリーデルクラフツ反応をおこなうことでヘテロ元素ドープフラーレン(C40N10B10)の合成に挑戦する。得られたヘテロフラーレンの電子状態をフラーレンC60と比較し、新規電子受容性材料として利用する。合成法を応用し、電子豊富ヘテロフラーレン(C40N15B5)や、フラーチューブやカーボンナノチューブのヘテロ元素ドープ体のような魅力的な炭素材料の開拓をおこなう。
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研究実績の概要 |
ヘテロ元素ドープフラーレンの合成に向け、非平面パイ共役分子であるコラニュレンを2枚繋ぎ合わせる合成戦略を考案した。まず、外周部アミノ化コラニュレンを用意し、酸化的にジアゾカップリングさせる方法を検討したがうまくいかなかった。そこで、Buchwald-Hartwigカップリングを用いてヨードコラニュレンと反応させ、アミノ架橋コラニュレン二量体を合成した。同様の方法でアミノ架橋コラニュレン二量体のクロロ化体を合成し、パラジウム触媒による分子内環化反応でピロール縮環コラニュレン二量体を合成した。固体中では波状に湾曲した構造が確認され、その蛍光量子収率が56%と極めて高いことがわかった。また、2ーメチルテトラヒドロフラン中低温で寿命が3.7秒にも及ぶ緑色燐光が確認された。 同様の手法を五置換コラニュレンに適用することで、ペンタアミノコラニュレンの合成を検討した。ペンタヨードコラニュレンに対しベンゾフェノンイミンを用いたアミノ化反応を行い、酸による脱保護反応をおこなったが、目的物であるペンタアミノコラニュレンを単離・同定することは困難であり、酸化的にジアゾ体を合成することも叶わなかった。今後は、まずモノアミノコラニュレンの反応性を検証し、ジアゾ架橋二量体が得られる条件を最適化する必要があると考えられる。 また、広く湾曲パイ共役系の構造ー物性相関を検証する目的で、アザヘリセン類の合成もおこなった。超原子価ヨウ素試薬を用いて一連のアザヘリセン類を合成し、ピロール窒素サイトと溶媒分子との水素結合による溶解性向上や、光学的特性の変化についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ピロール縮環コラニュレン二量体までは得られているものの、目的とするヘテロフラーレンの合成のためにはまずジアゾ架橋コラニュレン二量体の合成法を確立しなければならない。酸化条件を最適化するなど、反応条件を精査する必要がある。また、一連の化合物群が特定の条件下で蛍光量子収率が大幅に低下することがわかっており、それが光励起三重項種の生成に起因すると考え、低温で燐光スペクトルを確認したり計算化学による系間交差速度定数を算出するなどのアプローチによりその解析を行うことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ペンタアミノコラニュレンの酸化条件の検討および反応性を調査する。原料が極めて酸化されやすいため、イミン結合など可逆的にアミノ体への変換が可能な保護基を用いて、かつ低濃度で自己二量化反応が起こりやすいように反応を行う。得られたピロール縮環コラニュレン二量体やアザヘリセン類の光物性を詳細に検討すべく、DFT計算による励起三重項のエネルギー計算と系間項差の速度定数を算出する。
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