研究課題/領域番号 |
23K17956
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10312258)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 2次元材料 / 酸化物原子膜 / ボトムアップ合成 / エピタキシー技術 |
研究開始時の研究の概要 |
原子数個の厚みを有する原子膜(ナノシート)は、従来のバルク、薄膜とは異なる特異物性を発現する。原子膜は分子線エピタキシー等で実現する単原子層に相当しており、その構造、結晶化挙動の評価は薄膜成長、臨界物性の理解につながる普遍かつ重要な課題である。本研究では、従来、原子膜合成が困難である典型酸化物(TiO2, ZnO, BaTiO3など)を対象に、組成、構造、膜厚を精密に制御した原子膜の合成に挑戦し、先端構造解析により原子膜特有の特異構造、結晶化挙動の完全理解に迫る。さらに、原子膜を核とする薄膜成長、歪み超格子などへの展開を図り、酸化物原子膜をベースとする新しいエピタキシー技術の創成を目指す。
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研究実績の概要 |
原子数個の厚みを有する原子膜(ナノシート)は、従来のバルク、薄膜とは異なる特異物性を発現し、新しい機能材料・デバイスとしての応用が期待されている。本研究では、原子膜合成が困難であった典型酸化物(TiO2, ZnO, BaTiO3など)を対象に、組成、構造、膜厚を制御した酸化物原子膜を合成し、酸化物原子膜の特異構造解明とエピタキシー技術への展開を目指した研究を推進している。本年度は、最近開発した鋳型合成法を利用し、酸化物原子膜の合成と特異構造・物性の解明を目指した研究を進めた。 単純酸化物のナノシート化に向けては、固体の界面活性剤結晶を利用したボトムアップ合成法を開発し、アモルファスシリカ、CeO2、ZrO2などの非層状酸化物のナノシート合成に成功した。他方、複合酸化物のナノシート化には、ナノシート自体をテンプレートとして利用し、厚み、組成、構造を精密に制御して合成する鋳型合成法を開発した。この手法により、工業的に重要な酸化物合成に挑戦し、Ti0.87O2ナノシートを鋳型とした水溶液プロセスにより、60℃という低温で単位格子数個の厚みを有するBaTiO3ナノシートの合成に成功した 。特性評価の結果、強誘電性は単位格子3個に相当する厚さ1.8 nmのナノシートまで維持されることを確認した。単位格子3個のBaTiO3強誘電体は、自立膜としては最小の膜厚であり、超薄膜における臨界物性の解明やデバイスの小型化に重要な指針を与えるものと期待される。 上記の合成法に加え、ワンポット反応法、剥離ナノシート技術の高度化にも取り組み、これらの合成技術を貴金属、酸化物、複合アニオン系に適用することで、従来合成が困難であった貴金属ナノシート(Au, Pt, Pd)、Ru1-xCoxO2、酸フッ化物など、広範なナノシート合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた典型酸化物の原子膜合成を達成し、特異構造解明、物性開拓につながった。特に、BaTiO3ナノシートの合成に成功した点は大きな収穫であり、超薄膜における臨界物性解明につながる成果である。また、従来合成が困難とされていたPdナノシートの完全合成にも成功するなどの新展開もあり、当初を上回る成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した酸化物原子膜をベースに原子膜特有の構造・反応性を利用したエピタキシー技術の創成を目指す。ZnO、BaTiO3などを対象に、原子膜のラテラル成長により、膜厚1格子から数格子の巨大原子膜や面内ヘテロ構造を作製し、その特異構造、電子状態の解析を行う。さらに、原子膜を利用したエピタキシー技術の新たな試みとして、非平衡物質の合成や歪みエンジニアリングに挑戦し、巨大誘電率物質の開発を目指す。以上の研究を通じ、酸化物原子膜をベースとする非平衡物質の合成、エピタキシー技術などへの展開を図る。
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