研究課題/領域番号 |
23K17961
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
須川 晃資 日本大学, 理工学部, 教授 (40580204)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | Mie光共鳴 / C70 / フラーレン微粒子 / 蛍光増強 / フォトン・アップコンバージョン / 三重項対消滅 / フラーレン C70 / 微粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,太陽光デバイスの未利用波長光問題の解決に貢献可能な,新規光吸収能改善型フォトン・アップコンバージョン発光素子の開発を狙う.申請者らがこれまでに開発した局在型表面プラズモン共鳴を利用する光吸収能改善型フォトン・アップコンバージョン発光素子は,金属ナノ粒子の抵抗熱損失により,限られた素子形態のみでその真価が発揮される.本研究では,金属を利用せずに,増感分子から成る光共鳴性増感微粒子を開発することで,合目的的な素子形態で機能する光吸収能改善型フォトン・アップコンバージョン発光素子の開発に繋げる.
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研究実績の概要 |
令和5年度では,強光共鳴能を有するフラーレン(C70)増感微粒子を開発し,その光機能性について調査した. 【C70微粒子合成方法の確立】まず,C70サブマイクロキューブ粒子の再現性高い合成法を再沈法に基づいて確立した.また,この合成条件を詳細に検討し,その粒子径(辺長)を510 nm~1410 nm範囲内で合成することに成功した.さらに,この微粒子は特定の有機溶媒中では安定に分散かつ存在できることが確認されたが,別の有機溶媒ではその形状が崩壊してしまうことが確認された. 【C70微粒子の光機能性の解析】適切な溶媒に分散されたこれら微粒子の光学特性を実験的に調査し,C70本来の光学特性とは明らかに異なる,可視(特に長波長)~近赤外域に渡る,顕著な光消失バンドの発現を見出した.さらに,これら光消失バンドの発現波長と粒子径には,Mie光共鳴材料と類似の関係があることが見出され,長波長域の特異な光消失バンドがMie光共鳴に由来し得ることを検証した.さらに,この微粒子の光学特性を境界要素法によって解析したところ,実験によって得た光消失バンドと類似の結果を得,Mie光共鳴に帰属されることを確認した. 【増感材料としての性能評価】C70微粒子の光学性能を,発光特性から調査した.その量子収率はC70と同等レベルの小ささであったが,その遅延蛍光成分は非常に小さい可能性を示す結果を得た.C70本来とは異なる光学ダイナミクスを経ている可能性が高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では,光共鳴能と光増感能を併せ持つ光機能性材料という新たな材料開発概念を実証することが主たる目的であった.代表者は,フラーレン(C70)微粒子の合成法を確立し,その合目的な粒子径制御技術に基づいて,Mie光共鳴の発現の実証と,その共鳴波長の精密調整にも成功した.これは,当初計画以上の進展である.一方,この微粒子をアップコンバージョン発光の増感材料として利用することについては現在,素子開発に向けた条件検討を行っている最中であり,上述成果とのバランスを考慮し,「おおむね順調に進展している」と評した.
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今後の研究の推進方策 |
C70(フラーレン)微粒子の光共鳴と遷移双極子との相互作用(カップリング)特性を,消失・散乱・吸収スペクトル,発光強度,発光寿命の観点から詳細に調査し,その機構を解明する.また,今年度に開発された光共鳴波長制御技術を駆使し,カップリングを最大化できる微粒子特性の必要条件を絞り出す.さらに,この必要条件を,現在鋭意推進しているアップコンバージョン発光素子に盛り込み,その発光特性から「光共鳴能と増感能を併せ持つ」材料概念の優秀性を実証する.さらに,C70以外のフラーレンや,その他有機材料を利用して,光共鳴能と増感能を併せ持つ,多彩な材料の開発を狙う.
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