研究課題/領域番号 |
23K17964
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古南 博 近畿大学, 理工学部, 教授 (00257966)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 光触媒 / アンモニア / バイオマス / 硝酸 / 窒素循環 |
研究開始時の研究の概要 |
「炭素循環」が日本化学会から提唱された。その鍵反応は人工光合成および二酸化炭素メタン化反応である。エネルギー問題の解決法を模索しているうちに、これらの光触媒反応と連結した「窒素循環」により、廃バイオマスからのエネルギー抽出が可能になるという着想に至った。廃バイオマスを「炭素循環」に組み込み、そのエネルギーを直接、二酸化炭素に注入することは意外と難しい。一方、本研究では、光触媒をデバイスに用いて、室温でバイオマスと硝酸(イオン)間の電子移動プロセスだけを行う。つまり、バイオマスが持つ豊富な電子を還元反応に直接活用する。
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研究実績の概要 |
本研究は、硝酸とアンモニアの酸化還元サイクル(窒素循環)を利用する廃バイオマスからのエネルギー抽出に挑戦した。基本的な考え方は、1)バイオマスを電子源と考え、硝酸(イオン)のアンモニア(アンモニウムイオン)への8電子還元(NO3- + 10H+ + 8e- → NH4+ + 3H2O)に利用する、2)バイオマスと硝酸間の電子移動の駆動源には太陽光を、そのデバイスには光触媒を用いる、3)アンモニアを硝酸まで8電子酸化することにより大きな反応エンタルピーを得る(NH3(g) + 2O2(g) → HNO3(aq) + H2O(l), ΔrH°= -398 kJ /mol)、4)生成した硝酸を再度、電子アクセプターとして利用することにより窒素循環を維持する、である。この考え方は、これまで数多く提案されているバイオマス利用技術やエネルギーキャリアー技術には見られない、全く新しい独創的なものである。これにより、「窒素循環」を通じた「バイオマスがもつエネルギー・電子の有効利用」、「エネルギーキャリアー創出」「バイオマス廃棄物の無害化」を達成することができる。 令和5年度は、光触媒は、安価、無害、安定性、Clarke数の観点から、酸化チタンを採用した。バイオマスは多岐にわたるため、グリセリンを廃バイオマスのモデル物質とした。グリセリン1 molから14 molの電子が生成する(C3H8O3 + 3H2O → 14e- + 14H+ + 3CO2)ことに注目した。 光触媒的硝酸還元反応において、さまざまな条件を鋭意検討した結果、Cu助触媒を光析出法で調製したCu/TiO2が紫外光照射下、優れたアンモニア生成活性(選択率90%以上、見かけの量子効率20%以上)を示すことを見いだした。また、分解したグリセリンの一部が水素キャリアーとして有望なギ酸になることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間の研究計画として、1)バイオマスからの電子抽出と硝酸(イオン)の8電子還元【助触媒の探索】、2)バイオマスからの電子抽出能力が高く、硝酸還元に適した光触媒の開拓【光触媒の探索】、3)バイオマス酸化物の分析【有用物質の探索】、4)高難度バイオマスへの挑戦【拡張性の評価】を掲げている。 1)において、銅助触媒が活性および安定性に優れていることを明らかにしており、概ね80%の達成度であると考えている。2)において、酸化チタンが活性および安定性、経済性に優れており、達成度は概ね80%であると考えている。3)において、バイオマスからの有用物質として多くのギ酸と少量複数の未同定物質が生成することがわかっており、現時点の達成度は60%と判断した。4)については、令和6年度に取り組む予定であるため未達成である。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の研究計画として、1)バイオマスからの電子抽出と硝酸(イオン)の8電子還元【助触媒の探索】、2)バイオマスからの電子抽出能力が高く、硝酸還元に適した光触媒の開拓【光触媒の探索】、3)バイオマス酸化物の分析【有用物質の探索】、4)高難度バイオマスへの挑戦【拡張性の評価】を掲げている。 1)において、Cu助触媒を超える助触媒を開拓する。具体的には、コア-シェル粒子やハイエントロピー合金粒子を検討する。いずれも熱触媒系における研究例は豊富であるが、光触媒系における実施例は少なく、本計画がこの研究分野を先導することになる。2)において、可視光に応答する光触媒材料を探索する。硝酸の8電子還元電位はかなり貴側(0.875 V vs SHE)にあるため、水素生成(0 Vより卑側)や酸素還元系(-0.13 Vより卑側)とは異なり、伝導帯位置の制限が外れる。したがって、多くの可視光応答材料が候補に挙がる。自作および市販の材料を準備し、それらの特性を評価する。3)において、示差屈折率検出器を装着した高速液体クロマトグラフを用いて、中間生成物を同定・定量する。4)において、木質系バイオマスの最大の課題はリグニンの利用であろう。1)と2)がある程度進んだ時点でリグニンあるいは可溶化リグニンを電子源とする硝酸イオンの光触媒還元に挑戦する。
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