研究課題/領域番号 |
23K17965
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
保田 諭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 水素同位体 / 重水 / 電解 / 二次元薄膜 / 量子トンネル効果 |
研究開始時の研究の概要 |
二次元薄膜の水素同位体イオンの量子トンネル効果を利用して、高効率な重水濃縮を可能にする固体電解質膜型水電解デバイスを提案、その基礎的動作の実証と消費エネルギーの知見を得る。二次元薄膜の量子効果を適用した重水濃縮デバイスの創製は、学術的・応用的にも研究例がない画期的な提案であること、また、5GやIOT関連の半導体産業や医薬品開発に必須で、ほとんどを輸入に頼っている重水の低コスト製造を国内で実現する礎になる研究であり、挑戦的研究として意義は大きい。
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研究実績の概要 |
本研究は、二次元薄膜の量子トンネル効果を利用した高い水素同位体分離能を有する水電解デバイスを新しく構築し、その基礎的動作を実証することを目的とする。今年度は、二次元薄膜と電極触媒のヘテロ電極の構築と膜電極集合体の作製を行った。陽極には酸化イリジウム微粒子と二次元薄膜であるボロンナイトライドを、電解質膜にはNafion膜、陰極に白金微粒子担持カーボンからなる膜電極集合体の作製を行った。陰極の電極触媒をNafion膜に転写したのち、その背面に転写・エッチングプロセスによってボロンナイトライドをNafion膜に転写した。その後、酸化イリジウム微粒子をコートしたTi/Ptメッシュをボロンナイトライドに接触させることで水電解用の膜電極集合体を作製した。また、比較試料として、陽極には酸化イリジウム微粒子が、電解質膜にはNafion膜、陰極には白金微粒子担持カーボンからなる、一般的な水電解用の膜電極集合体も作製した。これら膜電極集合体を用いて水電解による水素同位体分離能の評価を行った。それぞれの膜電極集合体について、水電解用セルに組み込み、軽水と重水の混合水溶液を陽極にフローして電解、陰極で生成した水素同位体ガスを質量ガス分析により検証した。その結果、一般的な水電解用の膜電極集合体と比べ、ボロンナイトライドを含む膜電極集合体の方が、水素同位体分離能が最大で1.4倍程度、向上するのを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初計画どおりに二次元薄膜と電極触媒のヘテロ電極の構築と膜電極集合体を作製し、膜電極集合体を用いて水電解による水素同位体分離能の評価を行った結果、一般的な水電解用の膜電極集合体と比べ、ボロンナイトライドを含む膜電極集合体の方が、水素同位体分離能が最大で1.4倍程度、向上することが確認できたため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
分離能の向上が確認できたが、分離能のばらつきが多く最大でも従来触媒の1.4倍程度にとどまっているのが課題となっている。現状では、酸化イリジウム微粒子とボロンナイトライドの接触状況が悪いことや、ボロンナイトライド膜の破れなどが原因であると考えられる。今後は、この界面形成をより改善していくだけでなく、他の二次元薄膜材料と電極触媒とのヘテロ電極の構築と利用による、さらなる分離能の向上を試みる。
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