研究課題/領域番号 |
23K17973
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩平 関西学院大学, 理学部, 准教授 (40825197)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | システムズ・ケミストリー / 能動輸送 / 膜間物質輸送 / 両親媒性分子 / 脂質二重層 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の体内の細胞膜上には濃度勾配に逆らってイオンを輸送できる,ポンプと呼ばれるタンパク質が存在し,生体内のエネルギー変換プロセスを司っている.本研究では,ATPaseの能動輸送機構に基づき,人工イオンチャネル分子に対して化学エネルギーの消費に伴って構造が変化する機能を付与することで,人工ポンプを実現するための足がかりを築く.
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研究実績の概要 |
本年度は,化学エネルギーの消費に伴ってその構造を変化させる人工分子の合成を行った。具体的には,ジフェン酸部位を含んだオリゴフェニレンエチニレン骨格に対して2本のオクタエチレングリコール鎖を導入した新規交互両親媒性分子を合成した。なお,合成した分子は核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定および高分解能質量分析によって化合物の帰属を行った。 続いて,合成した分子の化学エネルギー応答性について評価した。交互両親媒性分子をテトラヒドロフラン(THF)と水の混合溶液に溶解させたのち,1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を添加してNMR測定を行ったところ,過渡的に酸無水物が生成し,その後加水分解によって自発的にジカルボン酸に戻る様子が観察された。さらに発光スペクトル測定を行ったところ,酸無水物の生成と加水分解に伴って交互両親媒性分子のオリゴフェニレンエチニレン骨格の周辺環境が変化している様子が示唆された。また,EDCが消費された後に再度EDCを添加することで再び同様の変化が生じることも確認することができた。以上の結果は,本研究で合成した交互両親媒性分子が当初の期待通りにEDCを化学エネルギーとして消費し,その構造を変化させていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設計した多量体型の交互両親媒性分子そのものの合成にはまだ至っていないものの,その繰り返し単位であるジフェン酸部位含有分子の合成にはすでに成功している。また,そのEDC応答性とそれに伴う分子構造の変化を示唆する結果を得られたことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,多量体型の交互両親媒性分子の合成を行うとともに,リン脂質からなる生体膜へと導入し,EDCに対する応答性とそれに伴う分子構造の変化を評価する。さらに,分子構造の変化に伴う膜間イオン透過能の発現を期待してその評価を行う。以上の実験を通じて人工ポンプを実現するための知見を収集していく予定である。
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