研究課題/領域番号 |
23K17990
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
廣田 順二 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (60405339)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | ゲノム工学 / 合成ゲノムベクター / ヒトゲノム再構築 / 遺伝子組換え技術 |
研究開始時の研究の概要 |
枯草菌ゲノム(BGM)ベクターの登場によって、我々が自在にデザインし合成できるゲノムサイズはメガベース(Mb)オーダーへと飛躍的に高まったが、Mbスケールの合成ゲノムを試験管内で操作し、他の細胞や受精卵に導入する方法は未だ確立されておらず、BGMベクターが開拓したゲノム合成技術は真の意味でMbの域には到達できていない。本研究では、Mbスケールのゲノム操作に挑戦し、これまで困難であったMbスケールの合成ゲノム活用のための基盤技術を確立する。
|
研究実績の概要 |
細菌人工染色体や酵母人工染色体に次ぐ、新たなゲノム工学ツールである枯草菌ゲノム(BGM)ベクターは、枯草菌ゲノムそのものをベクターとして活用するユニークなシステムであり、長大なDNAクローニング能力、簡便な遺伝子改変操作、連結操作によるメガベース(Mb)単位のゲノム合成が可能であるなどの特徴を有する。BGMベクターの登場によって、我々が自在にデザインし合成できるゲノムサイズはMbオーダーへと飛躍的に高まった。しかしながら、Mbスケールの合成ゲノムを菌体外に取り出し、他の細胞・受精卵に導入する方法は確立されておらず、BGMベクターが開拓したゲノム合成の技術は真の意味でMbの域には到達できていない。本研究では、ゲノムDNA長の伸長に伴うDNA溶液の粘性の上昇と剪断等の物理的ダメージを低減し、これまで達成が困難であったMbスケールの合成ゲノム活用のための基盤技術を確立することを目的とする。 上記目的を達成するために、BGMベクター上で構築したMb合成ゲノムの環状化し、さらに人工クロマチン形成をすることによってゲノムDNAの流体力学半径を小さくし、物理的ダメージの低減を図る。さらにコンパクト化したMb合成ゲノムをマウス受精卵に導入し、Mbスケール遺伝子導入法を確立することで本法の有用性を実証する。 令和5年度は、まず対象としたヒトT-Cell Receptor(TCR)遺伝子座(TRA:1MbとTRB:0.5Mb)のBACクローンをBGMベクター上で結合し、ゲノム再構築を開始し、TRAは0.5Mb、TRBは0.3Mbのゲノム長まで再構築した。さらにMb合成ゲノムの安定操作法の確立のため、BGMベクターから合成ゲノムDNA部分のみを環状にして取り出すゲノム分断法を試みた。ゲノム分断法は0.36Mbの長さまで再構築したゲノムDNAを対象に実施し、対象ゲノムを環状化して安定に取り出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mb単位のゲノムDNAの操作法確立を目的とし、ヒトTCR遺伝子座をBGMベクター上に再構築し、試験内で安定的に操作するための技術開発に挑戦している。令和5年度は、ヒトTCR遺伝子をコードする2つの遺伝子座TRA(1Mb)とTRB(0.5Mb)のゲノムDNAの再構築を開始し、BACクローン同士の連結操作を繰り返すことで、それぞれ0.5Mb、0.3Mbまでゲノム構造を再構築することに成功た。さらに直鎖状のゲノムDNAが剪断などの物理的ダメージを受けることから、再構築したゲノムDNAを環状ゲノムDNAとして取り出すことを試み、1つの環状ゲノムとなっているBGMベクターを2つの環状ゲノムに分断するゲノム分断法を試み、0.36Mbの環状ゲノムDNAを取り出すことに成功した。いずれも当初計画した実験計画に沿って実施しており、順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画に従い研究を推進する。具体的には、 1)TRAとTRBのゲノム構造の再構築を進め、完全長のTRAおよびTRBゲノムDNAを有するBGMクローンを得る。さらに0.36MbゲノムDNAの環状化に成功したが、Mb単位のゲノムDNAにも適用できるかを検証する。 2)合成ゲノムを用いてゲノム組換えマウスを作成するために、再構築・環状化したゲノムDNAを受精卵内で直鎖状化するためのカセットを導入する。MbトランスジェネシスにはTol2トランスポゾン末端配列を、MbノックインではCRISPR-Cas9切断配列を挿入する。 3)環状DNAはヌクレオソーム数に相関してアガロース電気泳動の速度は速く(流体力学半径が小さくなる)。またヒストンフリーのDNAに比べ、クロマチン構造をとるDNAは、二重鎖切断が起こりづらい。人工クロマチン形成による合成ゲノムのコンパクト化を試みる。 最終的に、上記計画でコンパクト化した合成ゲノムをマイクロインジェクション法等によってマウス受精卵に微量注入する。染色体への挿入方法によって、Mbトランスジェネシス(ランダム挿入)とゲノム編集技術を組み合わせたMbノックイン(標的特異的挿入)を試み、Mbスケールの合成ゲノム活用のための基盤技術を確立する。
|