研究課題/領域番号 |
23K17995
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 俊介 九州大学, 農学研究院, 助教 (70704295)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | CRISPR/Cas / ゲノム編集 / メタゲノム / 耐熱性 / 小型Cas / CRISPR-Cas / メタゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
当研究室では、環境サンプルのメタゲノム解析を独自に行い、新規CRISPR-Cas系エフェクターを探索してきた。我々はこれまでに各地温泉水を採取して調製したDNAのメタゲノム解析からユニークな配列を持つCas9とCas12aが、日本沿岸各地の海水を採取して調製したDNAのメタゲノム解析から小型のCasタンパク質が複数見出した。本研究はこれら新規Casエフェクター候補の機能と構造を解析すると共に、新たにメタゲノム解析を行い、機能未知なCas候補を独自に探索し、ゲノム編集ツールの幅を広げる新たな技術開発を目指す。
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研究実績の概要 |
CRISPR/Casシステムに基づくゲノム編集は、現在広く利用されているが、医療・産業分野では課題があり、国産のゲノム編集技術が強く望まれている。われわれは独自に、環境サンプルからDNAを調製して、メタゲノムを解析し、新規なCRISPR-Cas系エフェクターを探索してきた。これまでに温泉水のメタゲノム解析からユニークな配列を持つCas9とCas12a、そして日本海洋のメタゲノム解析から小型のCasタンパク質(ミニチュアCas)を10個(便宜的にMiniture Cas Candidate(MMC)1-10と呼ぶ)発見した。本研究はこれら新規なCasエフェクター候補の機能構造を解析すると共に、新たにメタゲノム解析を行い、機能未知なCasタンパク質を探索することで、ゲノム編集ツールの幅を広げる技術開発を目指している。現在までに、温泉サンプルに由来するCas9とCas12aは、高い熱安定性を示し、広範な温度域で標的DNAを切断する新規な耐熱性Casタンパク質であることを明らかにした。次に、海水サンプルに由来する2つの候補タンパク質MMC1、MMC2が、crRNA依存的に標的DNAを切断する新規な小型Casタンパク質であることを明らかにした。クライオ電子顕微鏡を用いて、これらのCasタンパク質とガイドRNA、標的DNAとの三者複合体の立体構造を決定し、Casタンパク質による核酸の分子認識と標的DNA切断のメカニズムを明らかにした。これらのCasタンパク質のゲノム編集ツールとしての有用性を調べるため、現在、大腸菌と出芽酵母を用いた解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにプラスミドライブラリーを用いたin vitro系によって、Cas9、Cas12aそして小型Cas候補タンパク質MMC1、MMC2が認識するProtospacer Adjacent Motif(PAM)を決定することができ、プラスミドDNAを基質とした標的DNA切断系を確立することができた。クライオ電子顕微鏡解析により、Cas9については、sgRNAとの二者複合体とRループの長さが異なる4つの三者複合体の立体構造を決定し、sgRNA、PAMの認識機構そしてRループの伸長に伴ったCas9の構造変化が明らかとなった。Cas12aについては、crRNA-標的DNA三者複合体の立体構造を決定し、crRNA、PAMそして標的DNAの認識機構が明らかとなった。MMC1については、crRNAとの二者複合体、そしてcrRNA、標的DNAとの三者複合体の立体構造を決定することに成功した。MMC2については、crRNA、標的DNAとの三者複合体の立体構造を決定した。構造解析の結果、MMC1およびMMC2によるcrRNA、PAMそして標的DNAの認識に関わるアミノ酸残基を特定し、変異体実験によって、これらのアミノ酸残基の重要性を検証した。大腸菌細胞内で、Cas9、Cas12a、MMC1、MMC2をCRISPRアレイと共発現させ、ゲノムの切断活性を評価した。MMC1については、大腸菌のゲノムを切断する結果が得られたが、Cas9とCas12aそしてMMC2については、大腸菌の生育に影響は見られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Cas9、Cas12aそしてMMC2は、大腸菌細胞内でゲノムDNAの切断活性が検出されなかった。これには、crRNA前駆体のプロセシングや大腸菌の増殖温度37度におけるCasタンパク質のDNA切断活性の低さが影響している可能性がある。そこで、リボザイムを利用したcrRNAの産生系を検討する、そして構造情報をもとに、標的DNA結合部位を変異を入れるなど改変を行い、高活性なCasタンパク質をスクリーニングすることを計画している。MMC1については、出芽酵母や培養細胞で発現させ、実際にゲノム編集できるのか解析を行う。有明海のメタゲノム解析から発見したMMC3については、大腸菌細胞内で推定CRISPRアレイと共発現させるとRNAが結合した複合体として、精製できることを見いだした。今後は、MMC3に結合したRNAをNGS解析によって配列を同定する。そして、PAMの決定を行い、標的DNA切断活性が検出されるのか、検討する。
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