研究課題/領域番号 |
23K17996
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
中澤 昌美 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 講師 (90343417)
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研究分担者 |
柏山 祐一郎 福井工業大学, 環境学部, 教授 (00611782)
甲斐 建次 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (40508404)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 異種細胞間相互作用 / ユーグレノゾア / ラパザ / テトラセルミス / 盗葉緑体現象 / 細胞認識 / 自己認識 / 他者認識 / ケミカルバイオロジー / Rapaza viridis |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、希薄な天然水圏環境である海洋に生育する盗葉緑体生物ラパザが、高い特異性をもって葉緑体ドナー生物テトラセルミスを探知・識別する機構を、異種細胞間のケミカルコミュニケーションの観点から明らかにすることを目的とする。ラパザが葉緑体ドナーであるテトラセルミスを亜種レベルで厳密に識別して嗅ぎ分ける機構を担う化学因子を同定し、細胞による特異的な「非自己認識」の側面から理解する。捕食性生物による餌生物の選り好みは経験的に知られてきたが、生化学的研究に適した実験生物がこれまで存在しなかった。本研究の進展で、異種細胞間の特異的細胞認識機構の解明という新分野が生まれる可能性がある。
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研究実績の概要 |
本研究は、海洋に生息する真核盗葉緑体生物ラパザが、葉緑体ドナー細胞となるテトラセルミスを認識し、細胞内に取り込む機構について、細胞生理学的および天然物化学的な側面から理解しようとするものである。ユーグレニダの一種(淡水性ユーグレナの近縁種)であるラパザは光合成による独立栄養で生育するが、その光合成器官は自ら合成したものではなく、緑藻テトラセルミスから奪い取ったものである。ラパザの生存はテトラセルミスからの盗葉緑体現象に完全に依存しており、餌緑藻と海洋環境で出会うことができなければ、やがて光合成器官を維持できずに死んでしまう。希薄な海洋環境において、ドナー緑藻を捉えることは生存に必須の生命現象である。一方で、ラパザの餌の選り好みに関しては従来全く知見が無かったが、予備検討によりテトラセルミスであっても非常に限られた種のみを取り込んで盗葉緑体として利用することが示唆されてきた。そこで、本研究の初年次の半年間で、新たに国内および国外共同研究者からテトラセルミス培養株を収集し、ラパザとの共培養実験を行うことで、詳しくドナー緑藻の取り込みの有無を調べた。その結果、天然でラパザとともに単離された株(以後テトラセルミス天然株)に加えて3種の培養株が盗葉緑体源として利用可能であること、さらに当初想定していなかった現象として、テトラセルミス細胞に食いつくものの、しばらくすると取り込まずに離れていく、という挙動を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数のテトラセルミス細胞を、蛍光染色することにより選り好みを可視化、定量化することを予定していたが、予想に反して細胞がほとんど染色されなかったため、現在もなお染色方法や試薬の検討を進めているところである。今後は、染色無しでも選り好みを可視化できる方法も同時に検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、盗葉緑体ドナーとなるテトラセルミス株の選定について、再現性を重視した「単藻混合系」を実施し、取り込んだ後のラパザの増殖や光合成能力に着目した定量化を進めていく。さらに、ドナーとなるテトラセルミス同士での選択性に違いがあるかについて、蛍光染色による選り好み可視化条件のさらなる追求を進めるとともに、サイズの違いによる画像上での判別・画像処理による数値化などの可能性についても実現可能性を検証していく。一方で、ラパザによるテトラセルミス株の高選択的な選り好み、すなわち嗅ぎ分け現象に化学物質への応答が関わっているかを調べる。その研究手法の一例としては、培養上清や細胞懸濁液に対する細胞の走化性応答変化など、種特異的な応答もしくは忌避反応があるかを調べていく予定である。
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