研究課題/領域番号 |
23K18000
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
川原田 泰之 岩手大学, 農学部, 准教授 (80786129)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 植物生育促進 / 土壌細菌 / 揮発性物質 / 根粒共生 / ミヤコグサ |
研究開始時の研究の概要 |
肥料の三要素の一つである窒素は、植物の生育に必須である。植物は、この窒素源の獲得に土壌中の硝酸態窒素やアンモニア態窒素を根から吸収する。また、マメ科植物は、上記以外にも根粒菌との根粒共生を成立させて大気中の窒素をアンモニア態窒素に固定し、吸収することができる。このような背景の中、我々は、窒素飢餓状態の植物が、土壌細菌の揮発性物質を介して窒素源を獲得している可能性を示唆した。そこで、本研究では、細菌由来の揮発性物質を介した植物の新たな窒素源獲得メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
土壌細菌B3-1株から放出される揮発性物質と宿主植物(ミヤコグサ)との相互作用を厳密に評価するため、マジェンタボックスを上下に接続した閉鎖容器内で植物と土壌細菌B3-1株を、それぞれ隔離して共培養する間接的な相互作用システムを構築した。このシステム下で土壌細菌B3-1株から放出される揮発性物質をミヤコグサに暴露すると、TY培地で培養した土壌細菌B3-1株の揮発性物質は、窒素飢餓状態で生育させたミヤコグサの草丈と根長の双方の生育を促進させる一方、M9培地で培養した土壌細菌B3-1株の揮発性物質は、根長のみを促進させることが示された。さらに、ミヤコグサに根粒菌(Mesorhizobium loti MAFF303099株)を接種後、TY培地で培養した土壌細菌B3-1株の揮発性物質を暴露すると根粒数の減少が観察された一方、M9培地で培養した土壌細菌B3-1株の揮発性物質の暴露では根粒数が増加することが示された。このようなことから、土壌細菌B3-1株を培養する培地を替えることで、土壌細菌B3-1株が放出する揮発性物質の種類は変化することが予想された。 次に、ミヤコグサの生長および根粒数を制御する揮発性物質が水溶性であるかを検討するため、TY培地で培養した土壌細菌B3-1株の揮発性物質を植物水耕液に溶解し、その水耕液を用いてミヤコグサを生育させた。その結果、ミヤコグサの草丈の生育促進と根粒共生が観察された。これらの結果、根長を促進する揮発性物質は不溶性であり、草丈の生育促進と根粒共生の抑制する揮発性物質は水溶性であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌細菌B3-1株から放出される揮発性物質と宿主植物(ミヤコグサ)との相互作用を厳密に評価するため、閉鎖した容器内で植物と土壌細菌B3-1株を隔離して共培養する間接的な相互作用システムが構築されたことや、同システムを用いて土壌細菌B3-1株が放出する揮発性物質に対するミヤコグサの様々な応答が確認されたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、TY培地で培養した時に放出される土壌細菌B3-1株の揮発性物質に焦点をあて、GC-MS、およびLC-MSを用いて揮発性物質を網羅的に同定する。さらに同定した物質から、ミヤコグサの草丈や根長の促進、および根粒数を制御する物質を選抜する。
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