研究課題/領域番号 |
23K18015
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
若井 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 主任研究員 (50545225)
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研究分担者 |
澄田 智美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 副主任研究員 (00746331)
平岡 聡史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 研究員 (70824423)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | プラスチック / 深海 / 生分解 / 微生物 / メタゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
近年、海洋環境のプラスチックごみが地球規模の問題となっており、沿岸だけでなく深海環境にまでその汚染が及んでいることが明らかになっている。一方で、海洋プラが沈降後に行き着く深海環境での分解性はほとんど評価されていない。海洋環境で分解可能な材料の開発が進んでも、深海環境での分解性が保証されていない材料の使用は、海洋環境全体での海洋プラの蓄積を解決することにはならない。そこで、本研究では、深海模擬環境での分解活性の定量的評価および深海微生物由来分解酵素の探索・評価を通して、人為起源汚染物質である深海プラスチックの生分解性評価方法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
海洋プラの汚染状況の調査や沿岸域を想定した海洋生分解性評価方法の規格化、新しい海洋生分解性プラスチックの開発が行われる一方で、深海と沿岸域では微生物群集構造や温度、圧力に違いがあるにもかかわらず深海環境でのプラスチック等の生分解活性評価法は規格化されておらず、深海環境での分解研究も乏しい。本研究では深海模擬環境での分解活性の定量的評価および深海微生物由来分解酵素の探索・評価を通して、人為起源汚染物質である深海プラスチックの生分解性評価方法の確立を目指している。 (1)加圧培養装置を用いた深海模擬環境での分解性評価:耐圧容器を用いて、評価材料(ポリ乳酸、ポリアミド11、バイオナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート)を深海堆積物と共に大気圧と30 MPa(深海3000 m相当)加圧下で培養した。6カ月間の培養では有意な重量減損等が確認できなかったが、プラスチック材料表面からはDNA抽出ができており、現在プラスチック表面の微生物群集構造解析を進めている。また、長期間の分解影響を評価するために同様の加圧培養試験を並行して進めている。 (2)深海バイオリソースを用いた分解酵素の探索:独自に構築している深海微生物由来遺伝子データベース(Deep-Sea Sediment Microbiome Database [DSSM-DB])をさらに拡充するため、異なる海域から採取した4種の深海堆積物についてPacBio Sequel IIを用いた高精度(HiFi)ロングリード解析を実施した。現在、ポストシーケンシング解析を進めると共に、既に見出している深海由来微生物のナイロン分解酵素について大腸菌での異種発現を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた加圧培養分解試験と深海微生物由来遺伝子データベースの拡充について予定通り進められている。 加圧培養分解試験においては、当初予定していた加圧培養装置よりも容量の大きい装置の利用ができたため、同時に検討できる材料種を増やすことができている。また、試験液、堆積物、プラスチック表面のそれぞれからDNAの抽出に成功しており、微生物群集構造解析を進めているところである。 深海微生物由来データベース[DSSM-DB]の拡充においては、予定通り海域の異なる4つの試料についてロングリードDNA解析を実施した。現在は、得られたシーケンシング結果に基づいて、アセンブルとアノテーションを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで順調に研究を進められており、2年度目も当初の予定通り、下記の二項目について研究を進める。 (1)加圧培養装置を用いた深海模擬環境での分解性評価:現在までに、深海堆積物を用いた6カ月の培養試験を終了しており、並行して進めている培養サンプルについては、培養開始から12カ月後に取り出して、同様の評価を実施する。また、既に純粋分離に成功しているナイロン分解微生物を用いた分解試験についても同様に進める予定である。 (2)深海バイオリソースを用いた分解酵素の探索:1年度目に追加した環境試料からのDNA情報に基づいて、既知のプラスチック分解酵素の相同遺伝子の探索を行う。また、見出したプラスチック分解酵素相同遺伝子については、大腸菌での異種発現を行い、酵素特性の評価や結晶構造解析などを進める予定である。
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