研究課題/領域番号 |
23K18034
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
別役 重之 龍谷大学, 農学部, 准教授 (80588228)
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研究分担者 |
桝尾 俊介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10767122)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 植物病原細菌 / 植物毒素 / 不均一性 / 病原性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、細菌集団内での細胞ごとの【個性】が細菌集団の環境中での生存や宿主への病原性などのさまざまな機能発現に重要であることが理解されつつあるが、植物に病害を引き起こす植物病原細菌集団においてそのような【個性】が持つ意義に関しては、ほとんど知見がない。申請者らはこれまでに、植物病原細菌が感染組織内に形成する細菌集合体(バイオフィルム)において、植物毒素合成活性を持つ細菌細胞が不均一に分布することを見出している。本研究においては、この植物毒素合成活性発現細菌細胞分布に見られる不均一性のメカニズムと植物への病原力との関連を明らかにすることで、細菌性植物病害防除における新たな端緒を開くことを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究においては、植物病原細菌集合体(バイオフィルム)内部で植物毒素合成遺伝子発現活性化が細胞ごとに不均一に生じるメカニズムとその植物病原力との関連を明らかにすることで、細菌性植物病害防除における新たな端緒を開くことを目的としている。 植物病原細菌であるPseudomonas syringae pv. tomato DC3000(Pst) が生産する植物毒素コロナチン(COR)の合成遺伝子の発現に着目して行う本研究における鍵の一つは、蛍光COR合成関連遺伝子レポーターPst株を用いた遺伝学的スクリーニングをいかに簡便に行うことができるかであり、2023年度はそのための各種条件検討を行った。その結果、より短時間での露光で蛍光観察可能な蛍光実体顕微鏡ベースのスクリーニング系や、マルチウェルプレートと蛍光ズーム顕微鏡を用いた多検体自動スクリーニング系を構築することに成功した。また、共焦点顕微鏡でもマルチウェルプレートを用いた多検体の自動スクリーニング系が動作することを確認し、今後のスクリーニングの技術基盤を確立させることに成功した。 Pstレポーター株の構築と変異体集団の作出においては、多方面からの検討により本研究で用いる常発現プロモーターであるpsbAプロモーターが染色体挿入に不向きなことが判明したが、常発現プロモーター蛍光レポーターコンストラクトに関してはプラスミドとして用いることで対応可能であると考え、コンストラクションを進めている。 また、CORに関しては研究分担者施設において検出可能であることも確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を円滑かつ効率的に行うためには、蛍光COR合成関連遺伝子レポーターPst株を用いた遺伝学的スクリーニングの効率化が重要である。2023年度はそのための条件検討を行った。申請者らが予備実験において、二重プラスミド挿入によるCOR合成関連遺伝子活性蛍光レポーターPst株を用いて、COR合成遺伝子発現の不均一性を見出した際には、共焦点顕微鏡における感染植物体中での撮像が主であったが、蛍光ズーム顕微鏡で高倍率観察を行った際にも合成培地上に形成したPstコロニー内でも不均一性を確認できていた。そこで、蛍光実体顕微鏡や蛍光ズーム顕微鏡を用いた測定系を1次スクリーニングに用いることを念頭に置き、そのための各種条件検討を行った。その結果、高感度カメラの導入によってより短時間での露光で蛍光観察可能な蛍光実体顕微鏡ベースのスクリーニング系や、蛍光ズーム顕微鏡と電動ステージとの組み合わせによってマルチウェルプレートを用いた多検体の自動スクリーニング系を構築することに成功した。また、共焦点顕微鏡でもマルチウェルプレートを用いた多検体の自動スクリーニング系が動作することを確認し、今後のスクリーニングの技術基盤を確立させることに成功した。 蛍光レポーターPst株の構築においては、Pst菌体自体を標識するための常発現プロモーターとして用いたpsbAプロモーター制御下で蛍光タンパク質遺伝子を持つコンストラクトを染色体導入するためのコンストラクションを行なったところ、悉く失敗に終わり、同コンストラクトが高コピープラスミド上では強い細菌毒性を発揮していることが想定され、コンストラクション方針に変更を行うこととした(今後の方策)。 また研究分担者の施設においては、COR検出が可能なことは確認済みである。
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今後の研究の推進方策 |
psbAプロモーターは、低コピープラスミドであるpDSK519背景ではPstに対する毒性を発揮せず、Pstの蛍光タンパク質による可視化に成功した実績がある(Wang et al., New Phytol. 2007)。しかし、ゲノム挿入するための相同組換えコンストラクト用ベクターpK18msLP(Lee et al. J Microbiol Methods. 2018 )が高コピープラスミドであるため、2023年度の経験を踏まえるとうまくいかない可能性が高い。そこで、常発現マーカー(psbAプロモーター制御下での蛍光タンパク質発現)を染色体に組み込むことを断念し、COR合成関連遺伝子の蛍光レポーターをpK18msLP を用いてPst染色体に導入し、常発現マーカーは既に実績のあるpDSK519背景(Wang et al., New Phytol. 2007)でプラスミドとして導入することとした。本研究においては、常発現レポーター蛍光を発するPst細胞群の一部がCOR合成関連遺伝子レポーター蛍光を発する状態を想定しているため、万が一、常発現レポータープラスミドが脱落するようなことがあっても容易に判別可能(COR合成関連遺伝子レポーター蛍光を発するPst細胞が発現レポーター蛍光を発していない場合)であり、正しく現象を捉えることが可能であることから本研究の進展に問題はないと考えられる。この方針に沿ったコンストラクションを2023末より既に始めており、完成次第、Tn5を用いた変異体集団作出と、2023に構築した各種スクリーニング系を用いたスクリーニングを行う。
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