研究課題/領域番号 |
23K18049
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70274363)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 形質転換 / ゲノム編集 / 渦鞭毛藻 |
研究開始時の研究の概要 |
有害渦鞭毛藻は、赤潮や貝の毒化をしばしば引き起こし、我が国の水産業や食の安全に問題を引き起こしている。これらの問題の原因となる、渦鞭毛藻が独自に持つ様々な遺伝子機能を明らかにするためには、形質転換法用いて細胞内部にDNAを導入させ、これにより遺伝子機能をノックアウトするゲノム編集を行うことが有効と考えられる。しかし、有害渦鞭毛藻では形質転換法ならびにゲノム編集法のいずれも未開発である。そこで、本研究では、世界に先駆けて有害渦鞭毛藻の形質転換法、さらにはそのゲノム編集法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、世界に先駆けて有害渦鞭毛藻の形質転換法、さらにはゲノム編集法の開発に挑戦する。その意義として、半世紀以上に渡って‘謎’とされてきた、それらの大量増殖機構、魚介類殺滅機構、さらには毒産生機構に関わる遺伝子機能解明をもたらす、新たな学問領域である「ゲノム機能科学」を創出する。 本年度は、有毒渦鞭毛藻の形質転換法の新規開発を目指して、渦鞭毛藻用の形質転換ベクターを作成しようとした。他の無毒な渦鞭毛藻の形質転換に用いられた形質転換プラスミドであるDinoIII-arrO-N(Sprecher et al. 2020)に注目し、これに元来含まれていた抗生物質耐性遺伝子を、アッセンブリーキットを用いて、有毒渦鞭毛藻のためにコドンを最適化したnptIIと入れ替えた形質転換プラスミドを構築した。次に、多重パルス電気穿孔法(マルチパスエレクトロポレーション:MPE)を用いることにより、細胞内に形質転換ベクターを導入することに先立ち、蛍光マーカー分子(FITC-dextran)を用いて、これを有毒渦鞭毛藻の1種であるP. lima complex株の細胞内に導入する条件を検討した。その結果、まず2mm gapキュベットを用いてMPEを行った結果、FITC蛍光を有する細胞を観察することは出来なかった。そこで、1mm gapキュベットを用いて珪藻等に用いられている条件を参考としてMPEを行った結果、FITC蛍光を有する細胞をわずかに観察可能な条件を見出すことが出来た。さらに、本条件を変化させて90通り以上の条件の下でMPEを行った結果、63~72%と高い割合でFITC蛍光を有する細胞が見られる条件を見出すことに成功した。本条件は、有毒渦鞭毛藻の細胞内に形質転換プラスミドを導入するために有用であることが期待され、次年度は本条件を用いて、その形質転換に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、有毒渦鞭毛藻の形質転換ベクターの構築とMPEによる遺伝子導入条件の確立を目標としていたが、前者についてはその構築に成功し、後者については蛍光マーカー分子(FITC-dextran)を用いて、これを有毒渦鞭毛藻の1種であるP. lima complex株の細胞内に導入する条件を検討し、これを高効率に細胞内に導入する条件を見出すことに成功したことから、概ね計画通り研究が進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず前年度に明らかにしたMPEの条件と、有毒渦鞭毛藻用の形質転換プラスミドを用いて、P. lima complex株の細胞内へのDNA導入条件を最適化する。この最適化した条件の下で、本藻に形質転換ベクターを導入し、これにより得た形質転換体を用いて、ゲノミックPCRにより遺伝子の導入を確認し、さらに逆転写PCRにより導入遺伝子の発現を確認する。これによって、世界に先駆けて、有毒渦鞭毛藻の形質転換法を確立する。さらに、有害渦鞭毛藻のゲノム編集法の開発を目指して、それに必要となるゲノム編集用ベクターを構築し、これをその細胞内に導入することにより、有毒渦鞭毛藻のゲノム編集法を確立する予定である。
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