研究課題/領域番号 |
23K18070
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 謙 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30449003)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 乳腺上皮細胞 / 培養乳 / 乳成分 / 乳脂質 / 乳糖 / 乳タンパク質 / 灌流培養 / 血液 / 乳汁 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、細胞培養技術を用いて食料生産する“細胞農業”の研究が世界中で活発化している。しかし、代表的な畜産物である “乳”を培養技術で生産する研究はほとんど行われていない。“乳”とは、乳腺上皮細胞が血液中の栄養素を代謝して得られる分泌液である。本研究では、血流と搾乳を模した灌流システムで乳腺上皮細胞を培養し、世界初の培養乳を実現させる。
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研究実績の概要 |
近年、細胞培養技術を用いて食料生産する概念が一般化し、畜産物である肉を製造する培養肉の研究が活発化している。しかし、同じ畜産物である “乳”を培養技術で生産する研究は相対的に遅れており、培養乳を実現化した例は存在しない。細胞生理学的に捉えると、“乳”とは、乳腺上皮細胞の分泌液である。乳腺上皮細胞が血液中の栄養素を材料として産生したタンパク質、脂質、乳糖などを含む乳成分を合成し、分泌している。そこで本研究では、血流を模した培地供給システムによって乳腺上皮細胞に栄養素を供給し、搾乳を模した培地交換システムによって乳成分を回収する方法を確立する。 まず、マウス乳腺とウシ乳腺を採取し、コラゲナーゼ処理と密度勾配遠心法により乳腺上皮細胞を採取した。採取した乳腺上皮細胞を培養下で増殖させた後、乳成分産生応力を誘導する成分を含む培地で培養し、乳分泌を培養下で再現した培養モデルを作製した。この培養モデルにおいて、培地中に主要な乳タンパク質(カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアルブミン)の産生を確認した。また、乳腺上皮細胞が乳糖や乳脂質の合成に必要な遺伝子群を発現していることも確認された。さらに、培養モデルの乳腺上皮細胞層の細胞間隙には強固なタイトジャンクションを形成されており、上層培地と下層培地が混ざらないようにする障壁として機能していることも確認された。この培養モデルの下層培地と上槽培地にそれぞれ独立した系統のポンプにつなぎ、“血流と搾乳”を模して流れを再現した状態で培養できるシステムを構築し、一定時間培養した。その結果、乳腺上皮細胞に新鮮な培地を供給しつつ、分泌された乳成分を回収できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の研究を遂行するにあたり、効率を重視して実験の順番を一部変更したが、研究全体としては順調に進んでいる。しかし、現状において当初の計画以上の進捗は得られていない。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目である次年度は、初年度の研究をさらに発展させる実験を行う。まず、2系統の灌流培養システムの最適なポンプ流速、チューブ径、培地量をさらに検証し、その最適化を行う。同時に培養乳の生産性を向上させる下槽用培地と上槽用培地に含まれる培地成分をそれぞれ検証し、各組成の最適化を行う。具体的には下槽用培地では乳成分産生に最適な栄養素の組成(アミノ酸、脂肪酸、グルコース、ウシ血清)、上槽用培地では乳成分分泌に最適な無機塩類の組成(Na+、K+、Ca2+、Cl-、PO43-)を検証し、各培地の組成を決定する。検証の指標には、上槽用培地に分泌された主要乳成分(カゼイン、乳糖、トリグリセリド)の量をELISAと専用キットで測定した値を用いる。最終的に研究①―③の成果を統合した技術で培養乳を生産する。得られた培養乳の乳成分組成と生産効率を精査するため、主要乳成分の単位時間当たりの生産量を測定する。また、通常の牛乳と成分比較することで、培養乳としての性状を評価する。
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