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ネオスポラ感染症に対する環境を汚染しない新たな弱毒生ワクチンの開発研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K18071
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
研究機関帯広畜産大学

研究代表者

西川 義文  帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (90431395)

研究分担者 潮 奈々子  帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特任助教 (00941428)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード原虫 / ネオスポラ / ワクチン / ベクター / 原虫病
研究開始時の研究の概要

農場経営を進める上で家畜生産に損害を与える疾病、特に病原性原虫ネオスポラの感染による流産に注意する必要がある。しかしネオスポラに対するワクチンや治療薬は実用化されていない。ネオスポラの問題点として、ウシなどの中間宿主の脳、筋肉にシストを作り潜伏感染すること(食肉の汚染、水平・垂直感染のリスク)、終宿主イヌ科動物で有性生殖によりオーシストを排出すること(環境の汚染、水平感染のリスク)がある。そこで本研究では、「体内伝搬しない」、「潜伏感染しない」、「有性生殖しない」 3つの特徴を持つ、安全性を高めた次世代の弱毒生ワクチン株を開発する。

研究実績の概要

我が国で対策の必要な家畜原虫病としてネオスポラ病があり、水平・垂直感染によるウシなどの家畜の流産が問題となっている。そこで本研究ではネオスポラ感染症を対象とし、応募者が確立したネオスポラ用遺伝子編集技術を基盤として、「体内伝搬しない」、「潜伏感染しない」、「有性生殖しない」特徴をもつ次世代の弱毒生ワクチン株の開発を目指している。2023年度は以下の項目を明らかにした。
「体内伝搬しない」特徴をもつ次世代の弱毒生ワクチン株を作製するために、抗原特異的モノクローナル抗体の処置によりネオスポラの宿主細胞感染が低下する実験データに着目した。原虫の表面抗原NcSAG1は宿主細胞への接着・侵入に関与する分子であり、CRISPR/Cas9系によりNcSAG1欠損原虫株(NcSAG1KO)を作製した。NcSAG1遺伝子の欠失は、原虫の宿主細胞への感染率を有意に低下させ、感染細胞から原虫の脱出率を低下させた。非妊娠雌雄BALB/cマウスを用いたin vivo試験では、NcSAG1KO感染マウスは親株感染マウスに比べて生存率が有意に高く、体重変化も少なかった。また、BALB/cマウスの垂直感染モデルについては、NcSAG1遺伝子を欠失させることにより、仔マウスの生存率が有意に向上し、仔マウスの脳内の原虫感染が大幅に低下した。次に、NcSAG1KO株接種後45日目にネオスポラの攻撃試験を行いマウスの脳内原虫数を比較したところ、ワクチン株未接種マウスと比較してNcSAG1KO株接種マウスの脳で原虫数の有意な減少が認められた。以上より、NcSAG1がネオスポラの体内伝搬および病態形成における重要な分子であり、NcSAG1KOは弱毒生ワクチン株の候補となることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画では、候補遺伝子の欠損原虫を作製しマウスでその病原性の低下を確認、次に攻撃試験による生ワクチンの効果の検証を予定していた。2023年度は下記のように、NcSAG1KOは弱毒生ワクチン株の候補となることが示された。
抗原特異的モノクローナル抗体の処置によりネオスポラの宿主細胞感染が低下する実験データに着目した。原虫の表面抗原NcSAG1は宿主細胞への接着・侵入に関与する分子であり、CRISPR/Cas9系によりNcSAG1欠損原虫株(NcSAG1KO)を作製した。NcSAG1遺伝子の欠失は、原虫の宿主細胞への感染率を有意に低下させ、感染細胞から原虫の脱出率を低下させた。非妊娠雌雄BALB/cマウスを用いたin vivo試験では、NcSAG1KO感染マウスは親株感染マウスに比べて生存率が有意に高く、体重変化も少なかった。また、BALB/cマウスの垂直感染モデルについては、NcSAG1遺伝子を欠失させることにより、仔マウスの生存率が有意に向上し、仔マウスの脳内の原虫感染が大幅に低下した。次に、NcSAG1KO株接種後45日目にネオスポラの攻撃試験を行いマウスの脳内原虫数を比較したところ、ワクチン株未接種マウスと比較してNcSAG1KO株接種マウスの脳で原虫数の有意な減少が認められた。
以上より、NcSAG1がネオスポラの体内伝搬および病態形成における重要な分子であり、NcSAG1KOは弱毒生ワクチン株の候補となることが示唆されたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

次年度は潜伏感染しない原虫株の作出を予定している。ネオスポラ病で問題となるのが原虫の中枢神経系および筋組織での潜伏感染であり、妊娠期の免疫抑制により原虫が再活性化されて流産あるいは垂直感染が起こる。具体的には、活動期のタキゾイト(Tz)が休眠期のブラディゾイト(Bz)に変換することでシスト化による潜伏感染が起こり、再活性化によりBzからTzへの逆変換が起こる。ネオスポラNcLiv株は、20 μMニトロプルシドナトリウム(SNP)の添加により8-10日でin vitroでTzからBzへの変換が可能である。
そこで、gRNAライブラリーをNcLiv-Cas9にエレクトロポレーションで導入し、SNP処理によりBz変換を誘導する。NcLiv-Cas9はBz期に作動するブロモーターBAG1でGFPが発現するように設計されており、セルソーターによりGFP陽性原虫(Bz)とGFP陰性原虫(Tz)を分離し、それぞれの原虫ポピュレーションからゲノムDNAを調整し、ゲノム解析によりGFP陰性原虫で特異的に見出されるgRNAを検出することで候補遺伝子を5種類程度選択する。候補遺伝子の欠損原虫については株化を行い、再度マウスに感染させて、マウスの生存率の上昇とシストの形成不全を確認する。シスト形成が最も低下した株を免疫し、Nc1-Lucで攻撃試験を行い、ルシフェラーゼ発現を指標にしてワクチン株の感染防御効果を検証し、追加の遺伝子欠損により「体内伝搬しない」かつ「潜伏感染しない」原虫株を作製する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] Mahidol University(タイ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] Sylhet Agricultural University/Chattogram University(バングラデシュ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Evaluation of Immunodiagnostic Performances of Neospora caninum Peroxiredoxin 2 (NcPrx2), Microneme 4 (NcMIC4), and Surface Antigen 1 (NcSAG1) Recombinant Proteins for Bovine Neosporosis2024

    • 著者名/発表者名
      Udonsom Ruenruetai、Adisakwattana Poom、Popruk Supaluk、Reamtong Onrapak、Jirapattharasate Charoonluk、Thiangtrongjit Tipparat、Rerkyusuke Sarinya、Chanlun Aran、Hasan Tanjila、Kotepui Manas、Siri Sukhontha、Nishikawa Yoshifumi、Mahittikorn Aongart
    • 雑誌名

      Animals

      巻: 14 号: 4 ページ: 531-531

    • DOI

      10.3390/ani14040531

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Neospora caninum surface antigen 1 is a major determinant of the pathogenesis of neosporosis in nonpregnant and pregnant mice2024

    • 著者名/発表者名
      Abdelbaky Hanan H.、Rahman Md. Masudur、Shimoda Naomi、Chen Yu、Hasan Tanjila、Ushio Nanako、Nishikawa Yoshifumi
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 14 ページ: 1334447-1334447

    • DOI

      10.3389/fmicb.2023.1334447

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ネオスポラ感染による単球のミトコンドリア損傷と IL-1β産生は GRA7 とプロヒビチンの相 互作用が関与する2024

    • 著者名/発表者名
      Chen Yu、下田 直美、二瓶 浩一、錦織 充広、中村 柊、小柴 琢己、潮(渡邉) 奈々子、西川 義文
    • 学会等名
      第93回日本寄生虫学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 帯広畜産大学・原虫病研究センター・西川研究室

    • URL

      https://sites.google.com/site/nishihdlab/

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] ⻄川研究室 X

    • URL

      https://twitter.com/Nishi_HD_LAB

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 帯広畜産大学・原虫病研究センター

    • URL

      http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/index.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-07-04   更新日: 2024-12-25  

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