研究課題/領域番号 |
23K18074
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 幹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20250730)
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研究分担者 |
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 教授 (10708001)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 採卵鶏 / セロトニン / 卵管 |
研究開始時の研究の概要 |
未だ明らかとなっていない鳥類の末梢セロトニンに着目し、末梢セロトニンの代謝的意義は卵生動物である鳥類で異なるか?、鳥類のセロトニンの特性を利用した卵生産の効率化が可能か?を最終ゴールとして、本研究ではニワトリの卵管からセロトニンが分泌されているか?、どの細胞から分泌されているか?、卵生産に対する末梢セロトニンの役割はなにか? を明らかにする挑戦的萌芽研究を行う。
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研究実績の概要 |
中枢のセロトニンの代謝的意義がほぼ明らかにされているが、末梢におけるセロトニンの作用に関してはまだ十分には解明されていない。申請者らはマウスにおいて、末梢セロトニンが糖代謝・脂質代謝を活性化していること、肉用鶏における血中セロトニン濃度と飼料要求率(FCR)の間に相関が存在することを報告している。さらには、採卵鶏の血中セロトニン濃度は肉用鶏の10倍以上高いこと、採卵鶏の卵管では極めて高いセロトニン合成酵素のmRNA発現が認められたことを予備試験で明らかにした。この結果は、卵生動物であるニワトリの卵生産には、卵管で生産されたセロトニンが重要である可能性を示唆するものである。そこで本研究では、未だ明らかとなっていない鳥類の末梢セロトニンに着目し、末梢セロトニンの代謝的意義が鳥類と哺乳類で異なるか、鳥類のセロトニンの特性を利用した卵生産の効率化が可能かを明らかにすることを目的とする。 事業初年度である本年度は、鳥類のセロトニンおよびセロトニン合成酵素と交差する抗体を選出するとともに、産卵中の採卵鶏にセロトニンおよびセロトニンレセプターのアンタゴニストを投与して、産卵に対する影響を観察した。その結果、ニワトリにセロトニンを腹腔内投与すると、正確に2日後の産卵が抑制された。また、卵形成過程を観察すると、巨大卵胞数や重量には変化はなく、卵管の通過速度が遅くなっている可能性が示唆された。よって、高濃度のセロトニンは、排卵や卵の卵黄取り込みによる発達、卵管の通過速度に影響を与えることが推察された。さらには、産卵鶏のヒナの血中セロトニン濃度は高く、産卵期にはその濃度が低くなること、ブロイラーに比べ血中のセロトニン濃度は10倍近く高いことが明らかとなり、卵管のセロトニンは産卵と関連性があることを明確に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少なくともセロトニン濃度が高いと卵生産が一時的に停止するとの知見を示した本年度の結果は、末梢のセロトニンが卵生産に関与していることを明確に示す結果であり、末梢セロトニンの代謝的意義は卵生動物である鳥類で異なるか?、鳥類のセロトニンの特性を利用した卵生産の効率化が可能か?を最終ゴールとする本研究の問いの重要な部分の答えを得たと考えて良い。鳥類のセロトニンと交差する抗体の選定に時間を費やしたが、次年度、この抗体を用いてさらに詳細な解析を行うことで、本研究が完遂することは十分に約束されているため、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
鳥類の代謝特徴である卵生産に末梢セロトニンが関与するとの仮説を立て、採卵鶏の血中セロトニン濃度は肉用鶏の10倍以上高く、そして採卵鶏の卵管では哺乳動物におけるセロトニン産生の主部位である腸管より極めて高いセロトニン合成酵素のmRNA発現が認められた。すなわち本研究は、糖代謝・脂質代謝が特徴的な鳥類における末梢セロトニンの機能は哺乳類とは異なる→卵を生産する特殊な代謝条件下における末梢セロトニンの役割、との理論展開を行い、その違いを比較生化学の観点から明確に示した仮説に基づく萌芽的研究である。 本年度の研究により、末梢のセロトニンは産卵と明確に関連性があることを示すことができた。そこで、この現象を詳細に説明するために、採卵鶏の卵管を採取し、各部位の組織切片を作成し、セロトニン抗体、セロトニン合成酵素の抗体を用いて、免疫組織化学的染色(IHC)を行い、卵管におけるセロトニン産生細胞を同定することを試みる。また、卵管の部位による差異やセロトニンレセプターの分布も明らかにする。さらには、末梢セロトニン濃度の日内変動を測定するとともに、卵形成の時間経過とともに、セロトニンの合成・分泌がどのように変動しているかを明らかにする。
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