研究課題/領域番号 |
23K18092
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上野 博史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10546592)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | F1-ATPase / 祖先配列推定 / 1分子計測 / 進化 / 構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
回転分子モーターF1-ATPase (F1)の回転触媒機構は構造解析や1分子回転解析によりその詳細が明らかにされており、種によりその回転機構が異なることが示されている。種間の進化に伴い、回転機構がなぜ大きく変化したのか非常に興味深い。しかしながら、種によってなぜ回転機構が異なるのか?その違いは何に起因するのか?という問いへの答えは今だ不明である。そこで本研究では、F1の回転機構の進化を1分子計測、祖先配列推定、構造解析を組み合わせ明らかにする。そこからF1の回転の本質的な機構や設計原理についての知見を得る。
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研究実績の概要 |
ミトコンドリア共通祖先F1とα-proteobacteria共通祖先F1について、F1の各サブユニットの系統解析を行い、それぞれの分子系統樹を作製した。その後、祖先配列推定を行い各サブユニットの共通祖先タンパク質のアミノ酸配列を推定した。これらの共通祖先F1の遺伝子を人工合成し、大腸菌内で発現させ精製を行った。その結果、これらの共通祖先F1が安定な複合体を形成し、溶液系での測定によりATPase活性を持つことが確認された。また、祖先タンパク質で見られることの多い耐熱性の向上も確認された。さらに精製した各共通祖先F1の1分子回転解析を行いその回転特性を調べた。具体的には、ATP結合待ちの角度と加水分解・リン酸解離待ちの角度を検証した。これまでのところ、ミトコンドリア共通祖先とα-proteobacteria共通祖先の両方において、ATP結合と開裂が同じ角度で起こることを支持する結果が得られている。先行研究から、現存するαプロテオバクテリアの一種であるParacoccus denitrificansのF1は、ATP結合と開裂が同じ角度で起こるが、ウシミトコンドリアF1はATP結合と開裂が別の角度で起こることが分かっている。そのため今回の結果は、αプロテオバクテリア祖先がミトコンドリア祖先に進化する間ではF1の回転スキームは変化せず、ミトコンドリア祖先が現存する様々な種に進化・分化していく際にF1の1回転中の回転停止数が増加した可能性を示唆している。現在、これらの祖先F1のクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア共通祖先とα-proteobacteria共通祖先の両方において、既に復元に成功しており1分子回転解析による回転スキームの同定にも一部成功している。構造解析についても、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析を進めており一部構造が明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
詳細な1分子回転解析を進める。具体的には、ミトコンドリアF1で観察されるリン酸結合待ちと考えられる停止が各祖先F1で観察されるのかを検証する。さらに構造解析を本格的に進める予定である。得られた構造とこれまで得られている各種F1の構造情報および回転機構の情報を照らし合わせることで、種による回転機構の違いをもたらす原因や、種によらない本質的な回転特性やその原因をつきとめ、最終的にF1の設計原理についての知見を得る。
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