研究課題/領域番号 |
23K18110
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青木 航 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10722184)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 自律的セントラルドグマ / 合成生物学 / 人工細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
現生生命における最小の自己複製プロセスは「自律的セントラルドグマ」である。自律的セントラルドグマは、転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製を、自らにコードされる情報に基づいて実行し、自己を複製するプロセスである。本研究の目的は、生きているとは何か?という問いへの解答を目指し、現生生命における最小の自己複製プロセス「自律的セントラルドグマ」を試験管内で再構成することである。このプロセスを再構成してその動作メカニズムを詳細に解明できれば、生命の動作原理を理解する試みに大きく貢献すると期待される。
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研究実績の概要 |
現生生命における最小の自己複製プロセスは「自律的セントラルドグマ」である。自律的 セントラルドグマは、転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製を、自らにコードされる情報に基づいて実行し、自己を複製するプロセスである。本研究では、生きているとは何 か?という問いへの解答を目指し、自律的セントラルドグマの試験管内再構成を目指す。 自律的セントラルドグマを起動するためには、転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製に関連する約200種の遺伝子を適切なバランスで発現させる必要がある。このように多数の遺伝子を適切に発現可能なシステムを構築するためには、ある反応条件における発現量を正確に定量し、その結果をフィードバックして、反応系を最適化するための仕組みが必要となる。申請者はこれまでの研究において、高い感度と同定率を示す次世代プロテオミクス・メタボロミクスを開発してきた(J. Biosci. Bioeng., 2019; mBio, 2020; Nat. Commun., 2020; PNAS, 2020)。これらの技術を応用し、Orbitrap型質量分析器によるパラレルリアクションモニタリングを開発することで、自律的セントラルドグマ関連因子を一斉に定量可能とするアッセイ系を構築しようと試みた。本年度は、モデルとして選択した26種類のセントラルドグマ関連タンパク質を一回の分析で定量可能な方法論を開発した。さらに、本手法を応用することで、無細胞転写翻訳系において多数の遺伝子の発現プロファイルを簡便に調整できることを明らかにした。本手法の適用範囲を他のセントラルドグマ関連因子に拡大することで、自己遺伝子発現バランスの最適化の試みが加速されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自律的セントラルドグマを再構成するためには、転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製に関連する遺伝子をバランスよく発現させる必要がある。しかし、関連遺伝子は200種近く存在し、それらを適切なバランスで発現させる仕組みを構築することは非常に困難である。そこで我々は、多数の遺伝子のin vitro発現バランスを同時に定量し、最適化する方法を開発した。具体的には、セントラルドグマ関連因子のモデルとして、26種類のゲノム複製関連タンパク質をターゲットとした定量質量分析法(パラレルリアクションモニタリング)を開発した。この方法を使うことで、これら26種類のタンパク質の発現量を一回の分析で定量可能である。実際に本手法を用いて、26種類の遺伝子を無細胞転写翻訳系に等モルで添加した際のin vitro発現プロファイルを取得した。その結果、等モルで遺伝子を添加したにも関わらず、発現バランスは最適な比率から大きくずれていることがわかった。その情報をフィードバックし、インプットする遺伝子の量を改良することで、すべての遺伝子が適切な比率で発現させられるようになった。本手法の適用範囲を他のセントラルドグマ関連因子に拡大することで、自己遺伝子発現バランスの最適化の試みが加速されることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度の研究を拡張し、ゲノム複製関連タンパク質のみならず、他のセントラルドグマ関連因子を網羅的に定量可能な方法論を完成させる。 また、当初予定の以下の2つの研究項目を推進する。 第一に、蛍光レポーターを開発する。自律的セントラルドグマを構成する各プロセス(転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製)が正しく起動しているかどうかを評価可能とするために、蛍光レポーターを整備する。具体的には、転写マーカーとしてmRNA認識蛍光プローブ、翻訳とリボソーム自己複製のマーカーとしてGFPを採用する。DNA複製マーカーとしては、大腸菌の複製起点oriCを含むプラスミドと、oriC近傍のDNA配列を認識する核酸蛍光プローブを採用する。それぞれの蛍光プローブは、マルチカラーイメージングが可能となる組み合わせを選択する。 第二に、自律的セントラルドグマの再構成に挑戦する。具体的には、Microfluidic chemostat(微小流路を用いた連続培養系)に、自律的セントラルドグマ関連遺伝子・ATPなどのエネルギー源・アミノ酸や核酸などの栄養源・RNAポリメラーゼ・リボソーム・3種類の蛍光レポーターを連続供給する。一定時間経過後、RNAポリメラーゼ・リボソーム・oriC含有プラスミドの添加はストップする。顕微鏡で3種類の蛍光レポーターの挙動をリアルタイムに観察し、自律的セントラルドグマ関連遺伝子から発現したタンパク質群のみで転写・翻訳・DNA複製・リボソーム自己複製が起動し続けるかどうかを確認する。廃液は回収し、質量分析で全関連因子の動態を経時的に評価する。蛍光レポーターと質量分析のデータを基に、ボトルネックの決定と改善を繰り返し、自律的セントラルドグマを連続的に起動させられる反応条件を探索する。
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