研究課題/領域番号 |
23K18114
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今田 勝巳 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (40346143)
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研究分担者 |
上野 博史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10546592)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 分子モーター / イオンチャネル / イオン駆動力 / エネルギー変換 |
研究開始時の研究の概要 |
イオン駆動力(IMF)で作動する細菌べん毛モーターは固定子中をプロトンが流れると回転子が回る。最近、固定子の構造から固定子自体がIMFで作動する回転モーターである可能性が強く示唆された。そこで本研究では、固定子の回転を実証し、その特性・作動機構の解明を目指す。IMFで作動する様々な分子システムで固定子と似たイオンチャネル様分子複合体が見つかっており、固定子の作動機構を解明すればIMFを仕事に変換する多様なシステムの理解が一気に進むと考えられる。
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研究実績の概要 |
細胞はイオン駆動力(IMF)をエネルギー源として、運動・物質輸送・ATP合成など様々な生命活動を行なっている。IMFで作動する代表的な分子装置であり、細菌の運動機関であるべん毛モーターは、回転子とイオンチャネルである固定子からなる。最近、固定子主要部のクライオ電子顕微鏡構造構造から固定子自体がIMFで駆動する新規のイオンチャネル型回転モーターである可能性が示唆された。そこで本研究では、固定子の回転を計測する系を構築し、回転の実証と固定子モーターの特性や作動機構の解明を目指している。今年度の実績は以下の通りである。 1)コンストラクトの作成と固定子の発現:固定子が常時活性化状態にある変異体が存在し、プロトンで作動するサルモネラ属菌固定子へのビオチンラベルの導入に成功した。アビタグ配列をBサブユニットのペリプラズムドメインに導入した固定子およびBサブユニットの膜貫通領域にロイシンジッパーとアビタグを導入して剛直化した固定子を発現するコンストラクトを作成し、発現を確認した。また、これら固定子が内因性BirAによりビオチンでラベルされていることを確認した。 2)ストレプトアビジンによる修飾:ビオチン化固定子を発現する菌体からスフェロプラストに外から加えたストレプトアビジンが結合することを蛍光ストレプトアビジンを用いて確認した。 3)スフェロプラストの基板への固定:スフェロプラストのガラス基板への吸着効率を高めるため、His-tag付き1回膜貫通蛋白質FliLをラベル化固定子と共発現する系を構築した。 4)ナトリウム型固定子の計測系の構築に備え、ナトリウム駆動型固定子のクライオ電子顕微鏡構造解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度までに、サルモネラ属菌を用いて2種類のアビタグ配列を有する固定子を発現する系の構築に成功した。これらは、内在性BirAでビオチン化されていたことから、ビオチン化のステップを省略することができた。また、ビオチン化固定子を発現する菌体から作成したスフェロプラストにストレプトアビジンが結合したことから、固定子へのラベル導入が可能であることを実証できた。現在の問題は、多数のスフェロプラストを基板へ固定することである。ストレプトアビジン化した基板では吸着固定の効率が悪かったため、Ni化した基板に吸着固定させる系の構築を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の項目を進める 1)His-tag付き1回膜貫通蛋白質FliLをラベル化固定子と共発現した菌体を用いてNi化基板に効率よく吸着固定させる系を確立する。吸着効率が上がれば、ストレプトアビジンを介した金コロイドラベルを行い、顕微鏡で観察する。 2)スフェロプラストでうまくいかない場合に備え、アビタグとHis-tagを有する固定子を用いて固定子を精製し、リポソームへの再構成を行う。 3)ナトリウムで駆動するキメラ固定子にラベルを導入した系を構築する。
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