研究課題/領域番号 |
23K18128
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
進藤 麻子 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (60512118)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 器官形成 / 形態形成 / 環境 / 全身システム / 耐性 / アフリカツメガエル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、器官形成において不明な点が多い「発生中の個体がおかれた環境 (栄養環境, 温度, pHなど)」の役割を明らかにすることを目的とする。発生中の体外環境の操作が容易なアフリカツメガエルの幼生を用いて、環境に応答する器官と制御分子機構の同定を目指す。器官形態を制御する新たな機構の開拓が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、アフリカツメガエル幼生を使用して器官形成を制御する環境因子とその応答機構の解明を目指している。今年度は主に栄養環境とpH環境が器官形成期の幼生の発生にどのような影響を与えるかを検証した。栄養環境についてはこれまで行ってきた甲状腺形態形成の研究から、糖代謝が甲状腺形態の形成開始に重要であることがわかっている。給餌の有無や餌の栄養素を操作による変化は甲状腺以外には消化管を対象とした解析を行った。引き続き、全身イメージングにより上記2器官以外への影響を解析中である。 今年度は新たにpH環境の変動が器官形成期の発生にどのような影響を及ぼしうるか検証するための基礎データの取得を行った。摂食を開始するステージの幼生を酸性からアルカリ性の培養液で育て、死亡率および体の成長への影響を解析した。環境pHが低下すると、幼生の体の大きさの指標である体長と眼球間距離がいずれも短縮した。一方で、アルカリ性環境の影響は弱いことがわかった。環境pHの変動と、体内および細胞内のpHの変動は必ずしも一致しないことが知られていることから、幼生の体腔に低pHまたは高pH溶液を直接注入したところ、予想外にいずれも体サイズへの影響は見られなかった。体内pHの変動に対する修正・耐性機構の存在が示唆される。現在、環境pHと体内pHの変動の影響を区別し、それぞれの条件で全身器官の形態形成および発生の変化を細胞レベルで解析中である。 最後に、栄養代謝と細胞内外のpH変動には相互作用があることも報告されているが、本研究においても両者の関係は興味深いところである。今年度得られた結果は、特にpH変動に対する耐性力をさらに解析する必要があることを示しており、栄養代謝との関係を探索するための基礎情報となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに環境pHと体内pHの影響の解析を開始し、興味深い結果が得られている。形態形成におけるpH耐性に関しては情報は多くないが、今年度得られたデータをもとに新たな形態制御機構の探索を行う。年度末に研究室の移動(引越し)があったが、機器が使用できない時期はそれ以前に行った実験のデータ解析を行い、深刻な遅れは生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
栄養環境の変動と器官形態形成の関係については、全身イメージングを開始し、各器官の発生過程と形態を精査する。これまで行った甲状腺の発生で確立した方法を基盤とし、給餌の有無と、栄養素を操作した餌を与える実験を行い、栄養に応答する器官形成の同定を目指す。 pH環境については、低pHで体サイズへの影響が見られた原因を探索する。全身イメージングを行い、(1) 全身器官が均一に縮小している、(2) 発生の遅延、(3) 特定の器官への影響、いずれが原因かを探索する。また、体内pHの変動には耐性を示したことから、環境pHの変動と、体内(体腔)pHおよび細胞内pHとの関連を明らかにする方法を探索する。
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