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ソーシャルディスタンスと脳形態比較によるアリを用いた個体脆弱化仮説の検証

研究課題

研究課題/領域番号 23K18155
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
研究機関琉球大学

研究代表者

辻 瑞樹  琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)

研究分担者 青沼 仁志  神戸大学, 理学研究科, 教授 (20333643)
下地 博之  琉球大学, 農学部, 准教授 (50726388)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
キーワード複雑性 / ソーシャルディスタンス / アリ / 脳サイズ / 衛生行動 / 分業 / 社会行動 / 脳 / 免疫
研究開始時の研究の概要

脳と社会行動の共進化は学際的研究テーマである.現生種が1種であるヒトでの実証研究機会は限られるため,ヒトに匹敵する社会を形成し多様に適応放散したアリ類に注目する.本研究では,社会的相互作用の複雑さの指標として,スナップ写真でデータ化できるソーシャルディスタンスに注目する.この距離が社会的相互作用の多さを一般的に規定する系統群特異的要素であるとの仮説のテストを第一目標にする.国内に生息する多数のアリ種でMicro-CTと共焦点レーザー顕微鏡による脳構造,DNA分析による病原菌感染率,集団サイズおよびソーシャルディスタンスを精査し,分子系統樹を参照した統計学的比較法を適用する.

研究実績の概要

本研究では,昆虫行動生態学者(辻,下地)と昆虫脳生理学者(青沼)が協力し,アリの生態と脳の種間比較を通し,脳容量の進化機構に関する諸説の妥当性をテストすることを目的とする.社会的相互作用の多さや複雑さを測る指標として,ソーシャルディスタンス(巣の中での働きアリの個体間距離)に注目する.個体間距離はすべての個体間相互作用の潜在的多寡に決定的な影響を与えるパラメーターであると考えられるからである.本研究では,種・系統群に特徴的な個体間距離が存在しアリは距離を自己調整しているとの仮説を立てる.初年度は数種のアリで室内実験巣をカメラ撮影し各種自動計測ソフトを用いた分析により個体間距離の客観的な測定法を検討した.特に、複数の個体が存在する状況下において, 特定数個体のみをトラッキングするための具体的な手法を開発した. またアミメアリのコロニーにおいて正負両方の密度依存的なパフォーマンス変化を観察した.これに関連して, アミメアリとオオシワアリを用いて高密度環境下における飼育実験を行なった. 他個体だけでなく, 巣内の糞の堆積場所との距離についても測定するための方法を検討した.並行してやはり複数種のアリについて,頭部をX線マイクロCTで撮影し,非破壊で頭部の中枢神経系,筋骨格系について3次元解析を行なった.また,オオハリアリやアギトアリ属などの脳の内部構造を3次元観察するために,セロトニンを抗体等を用いた抗体染色を行ない,共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行なった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は数種のアリで室内実験巣をカメラ撮影し各種自動計測ソフトを用いた分析によりいかに個体間距離を客観的に定量するかを検討した.社会的距離の密接に関わる巣内個体密度に関し,アミメアリのコロニー内で正と負の密度依存的な死亡率上昇と増殖率低下を観察した.並行してやはり複数種のアリについて,頭部をX線マイクロCTで撮影し,非破壊で頭部の中枢神経系,筋骨格系について3次元解析を行なった.また,オオハリアリやアギトアリ属などの脳の内部構造を3次元観察するために,セロトニンを抗体等を用いた抗体染色を行ない,共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行なった.コロニー内の個体間距離と糞の堆積物との関係を明らかにするために, 6種のアリを用いて巣内の糞の分布状況を調べた. また, トゲオオハリアリをモデルとして, 糞の堆積メカニズムを明らかにするために,計算機シミュレーションとバイオアッセイ進めている. また, 同様にトゲオオハリアリをモデルシステムとして, 巣内に糞を堆積させることの適応的意義を議論した論文を投稿中である. また, アミメアリとオオシワアリを用いた高密度環境下での飼育実験の結果を取りまとめ, 論文投稿を準備している段階である.

今後の研究の推進方策

スナップショット写真から個体間距離を定量する方法は概ね完成したが,実験巣にアリを収容してからの慣らし期間は種ごとに経験的に決定するより方法がなく,この点が多種データを収集する際のボトルネックになっている.アミメアリにおける密度依存的な短期パフォーマンスの変化はこれと関連する.本年度はこの問題を簡便に解消する方法も模索したい.マイクロCTと共焦点レーザー顕微鏡を用いたアリの脳の観察技術は着実に向上しており,今年度はソーシャルディスタンスを計測したアリ種に適用する予定である.アリの巣内の限られた部屋に糞が蓄積されそれを個体は避ける傾向にある事がこれまでの研究で示唆されたことから, 巣の構造とコロニー内の個体間距離も同時に調べる予定である. また, 糞はアリの巣部屋に特徴的な機能を与え, 個体間距離に強く影響すると考えられることから, 糞が持つ行動を制御する刺激についてトゲオオハリアリを用いて調べていく. アミメアリとオオシワアリ以外のアリ種においても高密度状況下の飼育実験を行うことで, アミメアリやオオシワアリで見られた現象の一般化を行う.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] The Argentine ant, Linepithema humile: natural history, ecology and impact of a successful invader2024

    • 著者名/発表者名
      Angulo Elena、Guenard Benoit、Balzani Paride、Bang Alok、Frizzi Filippo、Masoni Alberto、Abril S?lvia、Suarez Andrew V.、Hoffmann Benjamin、Benelli Giovanni、Aonuma Hitoshi、Lach Lori、Mothapo Palesa Natasha、Wossler Theresa、Santini Giacomo
    • 雑誌名

      Entomologia Generalis

      巻: 44 号: 1 ページ: 41-61

    • DOI

      10.1127/entomologia/2023/2187

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Reproductive potentials of task-shifting workers in a queenless ant2024

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yasunari、Oguchi Kohei、Miyazaki Satoshi、Maekawa Kiyoto、Shimoji Hiroyuki
    • 雑誌名

      Insectes Sociaux

      巻: 71 号: 1 ページ: 109-117

    • DOI

      10.1007/s00040-024-00949-4

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Embodied latch mechanism of the mandible to power at an ultrahigh speed in the trap-jaw ants Odontomachus kuroiwae2023

    • 著者名/発表者名
      Aonuma H., Naniwa K., Sugimoto Y., Ohkawara K. and Kagaya K.
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Biology

      巻: - 号: 10

    • DOI

      10.1242/jeb.245396

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Protocol to obtain long movement trajectories of leaders and followers in ant tandem runs2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yasunari、Valentini Gabriele、Pratt Stephen C.、Shimoji Hiroyuki、Mizumoto Nobuaki
    • 雑誌名

      STAR Protocols

      巻: 4 号: 4 ページ: 102769-102769

    • DOI

      10.1016/j.xpro.2023.102769

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A real-time feedback system stabilises the regulation of worker reproduction under various colony sizes2023

    • 著者名/発表者名
      Adejumo Simeon、Kikuchi Tomonori、Tsuji Kazuki、Maruyama-Onda Kana、Sugawara Ken、Hayashi Yoshikatsu
    • 雑誌名

      PLOS Computational Biology

      巻: 19 号: 3 ページ: 1-25

    • DOI

      10.1371/journal.pcbi.1010840

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] アミメアリにおけるアリー効果2024

    • 著者名/発表者名
      辻 和希,中山健太郎
    • 学会等名
      日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アリのトイレ形成と隠れたトイレの機能2024

    • 著者名/発表者名
      下地博之
    • 学会等名
      日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Musculoskeletal systems that generate extremely fast movements in the trap-jaw ants2023

    • 著者名/発表者名
      Aonuma, Hitoshi, Naniwa, Keisuke, Ohkawara, Kyohsuke
    • 学会等名
      The 11th International Symposium on Adaptive Motion of Animals and Machines (AMAM2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-07-04   更新日: 2024-12-25  

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