研究課題/領域番号 |
23K18159
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分46:神経科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
虫明 元 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80219849)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 大脳皮質 / 小脳 / 光操作 / 多点計測 / 光遺伝学 / アップコンバージョン |
研究開始時の研究の概要 |
多点計測電極技術としては、ニューロネクサスとの開発した当研究室の渡辺氏と行う。実際にげっ歯類、サルに導入して大脳皮質の関連部位のマッピングが行える体制を構築する。 当研究室の梶田氏には電極の生体親和性、記録部位における、抑制細胞の種類分布など調べていただく。解析には芝浦工大の保坂と連携し因果解析等の多変量統計法により評価する。 近赤外アップコンバージョンプローブに関しては、東北大学医工学科の田中徹と連携する。また光操作に関しては当研究室の大城と行う。課題としては、複数の行動課題を訓練しマルチ課題において、現在行っている課題、将来に行う課題を組み合わせて展望記憶が必要となるか課題として訓練する。
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研究実績の概要 |
当研究課題では 大脳皮質前頭前野と小脳皮質部の機能連関の高次機能に関する役割は何かという事で、多点計測技術と近赤外を用いた新たな光操作技術とを組み合わせ機能連関を解明する。まずは、動物に課題を訓練し、多点計測の準備及び予備的な分析を行う。また並行して、アップコンバージョン技術を用いた新しいプローブを制作するために粒子径を数ミクロンまで均一化した UC ナノ粒子を、生体適合性フレキシブル材料でもある感光性塗布膜中に高濃度・均一に拡散するプロセス技術、及び任意形状の UCナノ粒子発光領域を神経プローブの任意領域に作製するプロセス技術を確立した。 予備的な結果ではあるが、サルに複数の認知課題を訓練すると、課題の切替時にエラーがエラーく、スイッチコストのようなものがあることが判明した。また脳波レベルの予備的な解析では、デルタ波またはシータ波、ベータ波がこの課題に関連していること示唆されてた。また細胞レベルの解析では、認知課題で細胞の情報表現が動的に変化することが観察された。すなわち最初ニューロンの活動が加算―減算の情報を担うが、後に左右の手の動作に関連した情報を担う細胞へと表現する情報を変えていた。またマルチタスクでは、逆におなじ感覚刺激に対しても課題文脈が異なると、細胞が反応しなくなったりする、現象が見られ、文脈依存性に課題に参加する細胞が異なったり、反応様式を大きく変化する例が多数見つかった。 サルの小脳核を光操作するための予備的実験を行う準備をした。ChR2を小脳核に発現させ、光刺激することを試みた。大脳皮質の多点計測と組み合わせて、今後分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
認知課題の行動的な側面に関して、予想通りの所見が得られつつある。更には予備実験で振動との関連性には、シータ波、ベータ波、ガンマ波の間のカプリングや位相同期という興味深い現象が見つかってきた。アップコンバージョンを利用した新しいプローブの制作が進行して、その評価ができるようになった。また小脳核への光操作の準備が進んでいる。幾つかの要素技術が、それぞれ準備が整いつつあること、さらに位相カップリングという現象には、小脳―大脳皮質の機能連関を考える上で重要な特性と考えられ、今後の展開が期待される。細胞と細胞レベルの機能連関というより、振動と位相を介した連関はより汎用性のある機構と考えられるからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年の予備的な行動解析と振動現象の成果を、きちんと複数のサルで検証していく必要がある。さらに、アップコンバージョンを用いた電極の光変換効率を向上させて、光操作の実用に資するような特性をもたせるように最適化する必要がある。特に生体に留置するために生体適合性の高いフレキシブル有機材料を基材とした UC プローブの制作に期待している。これにより可視光では届かない脳深部へ近赤外光で到達し、そこで可視光に変換することで光操作できるようになる。多点計測と脳波の振動解析を関連付けることで、振動波の時空間分析を行えるようにする。 小脳―大脳皮質の機能連関は、局所的な一対一よりも、時空間パターンへの干渉や就職の可能性があるからである。デルタ波、シータ波、ベータ波、ガンマ波などの振動に関連して解明を進めることと、これらの振動の背景にある神経機構と、領域間の相互作用を調べていく予定である。
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