研究課題/領域番号 |
23K18164
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分46:神経科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中島 欽一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80302892)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 脊髄損傷 / 腸内細菌 / 海馬ニューロン新生 / ニューロン新生 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷で実は、遠位の脳機能の一部、学習・記憶などの認知機能障害も見られ、脊髄での炎症等が収束した慢性期でよりシビアであるが原因は不明である。今回応募者は、脊髄損傷と海馬ニューロン新生低下をつなぐ鍵因子として腸内細菌叢が重要であるという仮説を立てた。本研究ではこの仮説を基に、責任候補細菌の同定、除去、移植などにより、脊髄→腸→脳という異組織連携の様式を理解し、腸内細菌叢制御による、脊損誘発性認知障害改善法を創発する。本研究は、類似の既存研究は存在しないため挑戦的・萌芽的であり、基礎生命科学的だけでなく、老化による認知障害などへの利用も考えられ、応用面においても意義あるものと考える。
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研究実績の概要 |
脊髄が損傷を受けると、運動麻痺や感覚障害だけでなく、実は、遠く離れた脳が大きく関与する学習・記憶能力等の認知機能の低下も見られ、生活の質(QOL)をさらに低下させる。近年、学習・記憶には、海馬におけるニューロン新生の重要性が明らかになっており、代表者らも、薬剤投与による学習・記憶能力の低下が、ニューロン新生の増加により改善できることを報告している。最近、脊髄損傷により、実は、腸内細菌叢が変動することがわかってきた。一方で、つい最近、腸内細菌叢の変化は海馬ニューロン新生に影響を与えることが示された。これに関連して代表者は、胎仔期に抗てんかん薬バルプロ酸に曝露されると、成長後にニューロン新生の低下、学習・記憶障害が見られることを報告し、妊娠母マウスへの抗生物質投与により細菌母子垂直伝播を阻害すると、仔マウス成長後に見られるこのニューロン新生低下が改善されることを見出した(未発表)。以上から、代表者は、脊髄損傷と海馬ニューロン新生低下をつなぐ鍵因子として、腸内細菌叢が重要な役割を果たすとの仮説を立てた。そこで、脊髄→腸→脳という異臓器間の連携様式を理解するとともに、腸内細菌叢制御によって、脊髄損傷により低下した海馬ニューロン新生を改善する方法の開発を目的といて、本研究に着手した。 令和5年度は、脊髄損傷後経時的に海馬ニューロン新生を調べ、損傷直後ではなく、慢性期にその低下が見られるようになることを見出した。また海馬内のミクログリアも同様に慢性期において活性化していることがわかった。さらに、脊髄損傷後4週目におけるマウス糞便を用いて16SrRNA遺伝子シーケンスを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1)脊髄損傷後のニューロン新生とミクログリアの活性化の検討、2)糞便移植による海馬ニューロン新生への影響解析、3)ニューロン新生を制御する細菌種の同定(16SリボソームRNA菌叢解析)、4)脊髄損傷後認知機能の評価、の4項目を予定しているが、1)はほぼ終了、2)- 4)に関してもすでに、着手し、データが得られ始めているため。
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今後の研究の推進方策 |
先の4項目にういて、それぞれ、1).脊髄損傷後のニューロン新生とミクログリアの活性化の検討:脊髄の炎症と海馬の炎症の時期が異なっていることを示す、2). 糞便移植による海馬ニューロン新生への影響解析:非損傷マウスを抗生物質で除菌後、非損傷、損傷マウスより採取した糞便を移植し、ニューロン新生の増減を調べる、3).ニューロン新生を制御する細菌種の同定(16SリボソームRNA菌叢解析):解析を進める、4).脊髄損傷後認知機能の評価:脊髄損傷マウスへの抗生物質投与により、低下していた海馬ニューロン新生が改善、うつ様行動の改善が見割れるかどうかを調べる。
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