研究課題/領域番号 |
23K18170
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 正 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20212219)
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研究分担者 |
半田 悠 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00844721)
室本 竜太 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (30455597)
鍛代 悠一 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90756165)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 免疫応答 / ワクチン / 食作用 / CD47 / 抗体 / 赤血球 / コロナワクチン / がんワクチン / 貪食促進 |
研究開始時の研究の概要 |
パンデミック制御に有効な日本独自のワクチンの開発は非常に重要である。また、がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬に続く新たな免疫療法の開発が期待される。特に細胞性免疫誘導性ワクチンの技術はいまだに十分には開発されていない。申請者らはコロナおよびがんワクチンとして貪食促進型赤血球ワクチンを提案する。赤血球膜蛋白CD47は赤血球がマクロファージや樹状細胞の貪食を阻止する機能を有し、CD47欠損赤血球が樹状細胞に貪食され、抗原付加CD47欠損赤血球により抗原特異的免疫応答が誘導されることから、細胞性免疫誘導性ワクチンの開発が可能である。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント分子(PD-1やCTLA-4)などT細胞活性化制御分子の発見と理解が、がん免疫療法の開発において飛躍的な進歩をもたらしました。本研究では抗体産生を担うT細胞、B細胞活性化制御など免疫応答機構の新規理解と新規発見に基づくワクチン創製を目指すものである。特に新規標的として用いるCD47分子は細胞表面に局在する膜蛋白であり、生細胞のマクロファージや樹状細胞からの貪食阻止(Don’t eat meシグナナル)機能を有する。CD47欠損マウスでは赤血球が樹状細胞に貪食されることや抗原を表面に結合させたCD47欠損赤血球をマウスに投与することで抗原特異的な免疫応答を誘導できることが明らかとなっている。さらに、申請者らはCRISPR/Cas9でCD47遺伝子をノックアウトしたマウスがん細胞株の免疫不全マウスへの移植実験で、CD47欠損がん細胞株は免疫系により排除され、腫瘍形成されないこと、すなわち生体での免疫応答を誘導されやすいことも確認している。今回、申請者らはES細胞由来CD47欠損赤芽球作成や、臨床への応用を考慮した場合は、CD47を抗体ブロックした赤血球を担体として利用し、樹状細胞へ効率的にコロナウイルス抗原やがん抗原の輸送を行い、これら抗原に対する高効率の抗体産生や細胞障害性T細胞を誘導しうる新規ワクチンの開発を進める。CD47を欠損した赤血球を担体としているため、リポソームと比較して生体毒性が低いこと、血中滞留性が高く肝臓に蓄積しにくいこと、樹状細胞に効率的に貪食されることなどの優位点がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、新規ワクチンの開発を目標とし、高効率抗体産生を誘導するために重要な新たなT細胞活性化やB細胞抗体産生制御機構を明らかにし、さらにCD47(Don’t eat meシグナナル)を標的とした免疫応答機構を人為的に制御するため (1)CD47欠損赤芽球の作製、(2)抗原ペプチド内包CD47欠損赤血球の作製、(3)CD47欠損赤血球のワクチンとしての機能評価、(4)がんワクチンにおけるオブジーボ併用効果の検討などの項目のうち、特に(1)、(2)を中心に進め、マイクロホモロジー型のゲノム編集ベクターpCRIS-PITChv2-FBLを改変し、マウスCD47のエクソン1番上のCDSにstopコドンを導入したマウスCD47KOベクターを用いてマウス赤芽球細胞MEDEP-BRC5に導入し、CD47KO-MEDEP-BRC5を作成している、同時にエリスロポエチンによるMEDEP-BRC5を用いた赤血球に分化条件の設定を行い、CD47発現量に変化なく、50%程の細胞が赤血球に分化されることが示された。続いてマクロファージによる食作用の検出法の確立を行った。野生型マウスから赤血球を採取し、蛍光物質であるCMTMR Orangeによる蛍光標識を行い、抗CD47抗体を用いてCD47をブロックした後、マウスマクロファージ細胞株J774やBMDM由来マクロファージによる食作用をフローサイトメトリー法で確認し、抗体添加条件などの検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、新規ワクチンの開発を目標とし、CD47を標的とした免疫応答機構を人為的に制御するため (1)CD47欠損赤芽球の作製、(2)抗原ペプチド内包CD47欠損赤血球の作製、(3)CD47欠損赤血球のワクチンとしての機能評価、(4)がんワクチンにおけるオブジーボ併用効果の検討などの項目のうち、特に(3),(4)を中心に進める。(3)についてはコロナウイルスパイク抗原内包CD47欠損赤血球やWT1がん抗原ペプチド内包したCD47欠損赤血球をマウスに静注入し、免疫/追免疫を行い、ELISA法により抗体量を測定するなどCD47欠損赤血球のワクチンとしての機能を評価し、抗原に対する免疫誘導がCTLの活性化によるものかを検証するため、抗原内包CD47欠損赤血球を投与したマウスの脾臓からCD8陽性T細胞を単離し、抗原とGFPを発現させたマウス癌細胞株と混合培養後、CTLによる癌細胞の細胞死をAnnexin V染色により確認する。また、抗原エピトープのペプチドでCTLを刺激し、IFN-γの産生を測定することで抗原内包CD47欠損赤血球によりCTLの活性化が誘導されているかを検証する。また、WT1がん抗原発現腫瘍細胞株接種実験によるがん免疫応答やオブジーボ併用効果を検討する。
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