研究課題/領域番号 |
23K18173
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川島 博人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50260336)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 糖鎖 / シアリルルイスX / P-セレクチン / E-セレクチン / 好酸球 / 白血球浸潤 / 喘息 / 慢性炎症 / 好酸球浸潤 |
研究開始時の研究の概要 |
小児喘息の多くはアレルギー性の炎症によって気道狭窄が起こり、炎症が持続すると、発作の起こりやすい状態が慢性化する。一旦慢性化すると、アレルゲンの侵入、タバコの煙、ストレスなどで激しく咳き込む発作が起こる。一方近年、成人の喘息も増加しており、アレルゲンが特定できない非アトピー型喘息と言われる。小児喘息ではIgE高値となるが、成人型ではIgEが増えないことも多く、既存の抗IgE療法等の効果は十分ではない。本研究では、独自開発した抗糖鎖抗体を用いて、小児喘息および非アトピー型喘息に共通する好酸球浸潤を阻害することにより、喘息の原因となる気道の慢性炎症を根本治療する新規治療法開発を目指している。
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研究実績の概要 |
喘息は、発作性に起こる気道狭窄によって、呼吸困難、喘鳴、咳などの呼吸器症状をきたす疾患であり、基本病態として気道の慢性炎症が認められ、好酸球浸潤が主因となる。この気道の慢性炎症を抑制しないと気道過敏に陥り、アレルゲンなどの外部刺激により発作を繰り返し、徐々に気道壁が肥厚する気道リモデリングにより、喘息は難治化する。したがって、難治化を抑制するためには、好酸球浸潤による気道炎症の慢性化の抑制が鍵となるが、好酸球の組織浸潤メカニズムには不明な点が多い。そこで本研究では、独自に開発した抗糖鎖抗体および糖鎖合成酵素欠損マウスを活用し、好酸球浸潤と気道炎症における糖鎖の機能を解明するとともに、糖鎖の標的化による新規喘息治療の可能性を検証する。これまでに我々は、独自開発した抗体を用いた解析の結果、好酸球表面にはフコシル化糖鎖であるシアリルルイスX (sLex)が発現することを見出している。このsLex糖鎖は、炎症血管に誘導されるP-, E-セレクチンと特異的に結合することから、好酸球の肺組織内への浸潤過程が、このsLex糖鎖とP-, E-セレクチンの相互作用によって起こる可能性が考えられる。そこで令和5年度は、血管内で起こる血流の存在下における好酸球表面糖鎖と血管内皮細胞表面のP-, E-セレクチンの相互作用を模倣したin vitroのフローチャンバーアッセイ系を構築し、好酸球浮遊液をP-またはE-セレクチン発現細胞上に一定の流速で流したところ、好酸球がP-, E-セレクチン発現細胞の上をゆっくり転がるローリングを観察することができた。次に、抗sLex抗体F2を好酸球に結合させたのちに同アッセイを行ったところ、好酸球のローリングが顕著に抑制された。以上より、好酸球のローリングにsLex糖鎖が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自開発した抗糖鎖抗体を用いて好酸球表面に発現することを見出した糖鎖が、特異的に炎症血管上に発現する糖鎖認識分子と相互作用し、生理的流れの存在下で好酸球のローリングを媒介することを見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
好酸球表面sLex糖鎖の合成に関与する二種類の糖転移酵素Fut4およびFut7二重欠損マウスおよび野生型マウスを用いてマウス喘息モデルの誘導を行い、好酸球浸潤および慢性炎症・線維化病変を比較解析することにより、喘息病態形成におけるsLex糖鎖の機能解明を行う。また、マウス喘息モデルにおいてsLex糖鎖に対する特異抗体を投与し、喘息病態の解析により、抗sLex抗体の喘息治療効果の検討を行う。
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