研究課題/領域番号 |
23K18174
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石川 勇人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80453827)
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研究分担者 |
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 教授 (50525813)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | オピオイド受容体 / ミトラガイナアルカロイド / 構造活性相関研究 / インドール / バイアス型アゴニスト / パーシャルアゴニスト / 鎮痛活性 / オピオイド作動薬 / アルカロイド / Gバイアス型リガンド / 構造シグナル相関研究 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らが世界に先駆けて発見した、植物由来オピオイド作動薬7-ヒドロキシミトラガイニン(7HMG)の、in vivoにおけるモルヒネとの薬理活性の違いを分子レベルで解明し、その知見を基に、深刻な副作用のない、理想的なオピオイド作動性鎮痛薬を創製することを目的とする。そのために、7HMG及びそこから導かれる誘導体の実践的な合成法を開拓し、それら誘導体を用いたin vitroオピオイド受容体網羅的シグナル解析から導き出される新しい学理(構造シグナル相関研究)を確立する。シグナル選択的作動薬が得られた際は、鎮痛活性、依存性を含めたin vivo評価を行い、医薬候補化合物を見出す。
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研究実績の概要 |
令和5年度はオピオイド受容体の網羅的なシグナル解析を行うため、天然物であるmitragynineそのものから導く誘導体と、上部フラグメントと下部フラグメントを完全に分けて設計した誘導体に分けて合成研究を進めた。合成天然物であるmitragynineを基質とした誘導体では、新たにインドール環をインドリン環へと変換した化合物群を合成した。引き続き、NanoBiT assayを持ちいたオピオイド受容体網羅的シグナル解析を行った。その結果、とくにベンゼン環上にフッ素を導入した誘導体において、Gタンパク質経路のみを活性化することが明らかとなった(β-アレスチン経路は一切活性化しない)。バイアス型アゴニストとしての潜在性を示すことができた。また、興味深いことに、NanoBiT assayにおいて、モルヒネの様にオピオイドμ受容体フルアゴニストではなく、パーシャルアゴニストの様な挙動を示した。このパーシャルアゴニスト挙動とシグナル伝達の関係性、および副作用への影響に興味が持たれ、今後のシグナル構造活性相関研究により作用機序が明らかとなることが期待される。さらに、共同研究により、マウスを用いた鎮痛活性評価を行った結果、薬用植物活性本体として知られている7-hydroxymitragynineよりも強力な鎮痛活性を持っていることが明らかとなった。 また、β-アクリル酸残基を効率的に合成する手法を確立したのち、インドールセグメントに変わってイソインドリン環を縮合した誘導体を7種合成した。その結果、弱いながらもGタンパク質を選択的に活性化する誘導体を見出すことに成功した。天然物の誘導体に比べるとはるかに短工程で合成できるこれら誘導体に、オピオイド受容体作動活性が見られ、しかも、Gタンパク質選択性が観測された事実は、今後のシグナル構造活性相関研究を加速する重要な成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘導体合成に関して、数の上では当初の目標を下回ったが、より効率的な合成手法を確立できたため、今後の誘導体合成においては大幅な加速が期待できる。また、合成した化合物の中で、そのまま鎮痛薬として利用できそうな生物学的プロファイルを持つ誘導体の合成に成功した。医薬としての応用が期待できるだけでなく、薬理学的にバランス型アゴニストであるモルヒネと何が違うのかを詳細に検討していけば、シグナル構造活性相関研究が大いに進展するだろう。上述の結果については、特許および論文として発表する準備を進めている。以上の理由から「おおむね順調に進展している」と判断させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
天然物であるmitragynineを、合成化学的手法により大量供給を行い、それを基質としたインドリン誘導体の合成を試みる。ベンゼン環上へのフッ素の導入が活性発現に大きな影響を持っていたことから、他のハロゲンの導入や、電子供与基、および電子求引基の導入を試みる。すでに、強力な活性を持っている誘導体については、グラムスケールで合成し、マウスを用いた副作用に対する活性試験(報酬効果、耐性、便秘など)を進め、鎮痛活性と副作用の分離が分子レベルの知見を反映するかを確認する。 一方、よりシンプルかつシグナル構造活性相関を明確にするための誘導体合成を並行して進める。具体的には、βーアクリル酸部分を有する下部フラグメントをデカグラムスケールで合成し、それを用いて、さまざまな芳香族化合物の縮合を行う。こちらに関しては、昨年度の成果により、βーアクリル酸部分をもった誘導体に受容体縮合能があることがわかっているので、上部フラグメントをある程度ランダムスクリーニングで導入していく。100種以上の誘導体合成を目指す。合成した誘導体はNanoBiT assayを持ちいたオピオイド受容体網羅的シグナル解析を行い、バイアス型アゴニストとしての能力を評価する。構造と、活性評価をもとにして、シグナル構造活性相関研究を進め、オピオイドシグナルの選択的な作用発現機構の解明をめざす。なお、上記検討で有用なバイアス型アゴニストが見出された場合は、マウスによるin vivo活性試験を進め、ADME試験も含めた医薬品としての応用研究へ展開する。
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