研究課題/領域番号 |
23K18175
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
根本 哲宏 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80361450)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 抗菌活性 / グラム陰性菌 / 膜透過性 / クマリン誘導体 / 蛍光プローブ / 外膜透過性 / PIP |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、グラム陰性菌への化合物の低透過性の問題の原因の一つとなる排出ポンプによる化合物の排出を抑制するために、ピロール・イミダゾールポリアミド(PIP)とDNAとの相互作用を活用し、本相互作用を「足場」とする独自かつ新規な戦略によって、細胞内での薬剤の滞留性をコントロールする新しい技術を開発する。細胞内への移行と細胞内での局在・滞留を明らかにするため、デザイン分子を蛍光プローブ化することにより、分子の挙動を調査する。さらに、膜透過性自体を向上させる「シデロフォア」による輸送系も組み合わせることで、低膜透過性の克服を実現する新たなキャリア分子創出を目指す。
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研究実績の概要 |
初年度は以下の検討について行った。蛍光ラベル化したシプロフロキサシンを用いる膜透過過程の検証に関しては、NBD蛍光素子を連結したプローブ分子を用いて、フローサイトメトリーによる細胞内局在を調べた。その結果、C3アルキルリンカーで繋いだプローブ分子を用いた場合、シプロフロキサシン構造が細胞内取り込みに関与することが示唆されたが、排出ポンプによるはき出しによって細胞内濃度が低下していることがわかった。この結論は、排出ポンプ欠損株を用いた実験によっても支持されている。 抗菌活性と蛍光特性を併せ持つクマリン系天然物を用いるプローブ分子合成の基礎的検討として、天然物ライブラリーより見出されたクマリン系天然物の合成、並びにその誘導体化を行った。また、クマリン5位の水酸基上の置換基変換に付随し、天然物であるMurrayacoumarin Aの全合成ルートも確立した。 抗菌活性を有する天然物の合成として、Dragmacidin G及びDragmacidin Hの全合成に成功した。ピラジノン環上にフッ素、臭素、ヨウ素、を位置選択的に導入した基質を合成し、チオール誘導体の導入、Pd触媒を用いる位置選択的なクロスカップリングを経ることで天然物骨格を構築し、官能基変換を経ることで標的天然物へと誘導した。Dragmacidin G及びDragmacidin Hに加えて、インドール環上の臭素基を除いた誘導体、臭素基の位置を交換した誘導体も合成し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)並びにサルモネラに対しての抗菌活性を評価した。その結果、Dragmacidin Hの高い抗菌活性、並びにインドール環上の臭素基の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したとおり、3つのプロジェクトに関して研究目的に沿った具体的な成果、すなわちシプロフロキサシンー蛍光プローブ複合体を用いた膜透過に関しての新規知見、クマリン系天然物を基盤とした誘導体化と構造活性相関の情報、インドール系天然物の全合成と抗菌活性の詳細についての情報、が得られている。申請段階で記載したピロールイミダゾールポリアミド(PIP)との縮合等を検討する上での基礎的データの収集が複数の側面から着実に進んでいる点を踏まえても、概ね順調に進展しているとの評価が適切だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光ラベル化したシプロフロキサシンを用いる膜透過過程の検証に関しては、複数合成したNBD蛍光素子を連結したプローブ分子の中から、野生株でも弱いながら抗菌活性が見られたプローブ分子を再度合成し、共同研究者に提供して生物系実験を再度行い、膜透過性に与える影響に関しての知見を論文としてまとめる。また、PIPにNBD蛍光素子を連結した分子を合成することで、膜透過過程に対してのPIPの影響を調査する。 クマリン系天然物を基盤とした抗菌蛍光素子の合成については、構造活性相関を進めるとともに、抗菌活性と並行して細胞毒性も評価することで、創薬化学的な展開が可能かについて検討を進める。
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