研究課題/領域番号 |
23K18176
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 求 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20243264)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 触媒 / 水素社会 / 脱水素 / アルカン / 飽和炭化水素 / 水素貯蔵 / 有機合成化学 |
研究開始時の研究の概要 |
有機分子を構成する飽和炭素-炭素結合から温和な条件で水素分子を放出して不飽和結合を生成する触媒の創製を目的とする。水素分子とアルケンは、クリーンなエネルギー源と有用合成中間体という高い付加価値をそれぞれ有している。本研究により、エネルギー関連から炭素資源活用や創薬に至る幅広い分野をミリグラムからトンまでのクロススケールで支える科学技術の礎を築く。 熱力学的にアップヒルの本プロセスを実現するために、太陽から地球上に無尽蔵に降り注ぐ可視光のエネルギーを利用する。
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研究実績の概要 |
本研究は、有機分子を構成する飽和炭素-炭素結合(CH-CH)から温和な条件で水素分子(H2)を放出して不飽和C=C結合を生成する触媒の創製と展開を目的とする。H2とアルケン(C=C)は、クリーンなエネルギー源と有用合成中間体という高い付加価値をそれぞれ有している。本研究により、1)水素社会を支える水素貯蔵・運搬技術、2)炭素資源から高級アルカンを生成するアップグレード技術、3)多数の官能基を有する医薬分子の新規合成技術、4)医薬リード構造を後期誘導化してライブラリを拡張する分子技術等、エネルギー関連から炭素資源活用や創薬に至る幅広い分野をミリグラムからトンまでのクロススケールで支える科学技術の礎を築く。 広範な波及効果を有するにもかかわらず、その挑戦性から、本技術は現状では完全に未開拓である。熱力学的にアップヒルの本プロセスを実現するために、太陽から地球上に無尽蔵に降り注ぐ可視光のエネルギーを利用する。地球環境をこれ以上損なえない時代の大きな課題に対して、触媒開発を通じて高い価値を 持つ分子をサステイナブルに作るという基軸のもとに本研究を実施する。 本年度は、アルカンからの脱炭素を進行させる触媒システムを見い出し、世界初の室温・可視光照射条件におけるシクロヘキサンからの完全脱水素を達成した。この反応は、アルカンの強力な炭素ー水素結合を切断できるラジカル触媒を含む、4種類の触媒の協働によって進行した。また、フロー系を用いることで、本反応の効率を高めることができることを見い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エネルギー効率の高いアルカンの完全脱水素反応は、水素社会の基盤となる科学技術であるが、アルカンの炭素ー水素結合が極めて安定であり、その実現は世界中で希求されているものの非常に困難である。今回、4成分から成る触媒システムを組み上げることによって、その実現の端緒となる反応を達成した。エネルギー関連反応に必要なスケールを考えると、高価な金属触媒が必要なことや反応速度が低いことなど、解決すべき課題はまだ多く存在するものの、少なくとも第一歩を踏み出した成果であると高く評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
アルカン脱水素反応の効率を最適化し、安価な触媒を用いてシクロヘキサンから1時間程度で完結する条件を見い出す。そのためには短寿命中間体を複数の触媒間で受け渡す工夫が必要である。リガンド設計による電子授受の効率化と同時に、空間的にも中間体を受け渡せるような分子デザインを盛り込む。
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