研究課題/領域番号 |
23K18178
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富田 泰輔 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (30292957)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 相分離 / 細胞内温度 / ストレス顆粒 / 神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
TDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び、前頭側頭葉変性症(FTD)の原因タンパク質である。これらの患者の神経細胞内では、液固相分離(LSPS)による不溶性のTDP-43線維からなる封入体が観察される。一方、TDP-43は水溶液中で液液相分離(LLPS)を起こし、可逆性を保った凝縮体を形成する。申請者はLLPSを制御する物理学的因子として知られている「熱」に着目し、TDP-43細胞内動態および相分離について解析する。最終的には「温度細胞生物学」という観点から神経変性疾患発症メカニズムを理解するという極めて挑戦的な研究である。
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研究実績の概要 |
TDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び、前頭側頭葉変性症(FTD)の原因タンパク質である。これらの患者の神経細胞内では、液固相分離(LSPS)による不溶性のTDP-43線維からなる封入体が観察される。一方、TDP-43は水溶液中で液液相分離(LLPS)を起こし、可逆性を保った凝縮体を形成する。申請者はLLPSを制御する物理学的因子として知られている「熱」に着目し、TDP-43細胞内動態および相分離について解析する。最終的には「温度細胞生物学」という観点から神経変性疾患発症メカニズムを理解するという極めて挑戦的な研究である。当該年度においては局所加熱が実際にどの程度の温度上昇を起こしているかについて温度プローブを用いて検討すると同時に、一般的なストレス顆粒のマーカーであるG3BP1とTDP-43の温度感受性について検討し、G3BP1のほうが温度変化に速やかに反応して顆粒となること、またTDP-43顆粒とG3BP1顆粒は異なっているが空間的に近接していることを見出した。更に家族性ALSに連鎖する遺伝子変異を導入したTDP-43はこの温度感受性が更に低下し、顆粒形成には高温を必要とする一方で、顆粒の分解については野生型に遅れて起きることも見出した。これらの結果から家族性ALS遺伝子変異はTDP-43の温度感受性に影響を与えていることが示唆され、FTDやALSの発症に細胞内温度に対するレスポンスの異常が関わっている可能性が明らかとなった。また、英国ケンブリッジ大学との共同研究により、マイクロ流体チップを用いた高精度に温度制御を行いながらライブイメージングできる顕微鏡を用いてTDP-43顆粒形成について効率的にイメージングできる技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内温度に対するTDP-43動態の詳細が明らかとなりつつあり、順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに細胞内温度の違いがTDP-43動態に影響を与える可能性が明らかとなった。しかし、依然として細胞内温度の発生源と細胞内小器官の関連は不明である。そこでライブイメージングを用いて、これらの関連を明らかにする。また神経細胞についても解析し、樹状突起や軸索、シナプスとの関係についても検討する。
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