研究課題/領域番号 |
23K18193
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡部 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50432357)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 一回膜貫通タンパク質 / カーゴ受容体 / カーゴ / 亜鉛 / カルシウム / 細胞膜受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜上で機能する受容体など一回膜貫通タンパク質は、”柔らかい構造”を取っており、それゆえに、高分解能での全長の構造解析はほとんど進展していない。本研究では、柔らかい構造を取る一回膜貫通タンパク質の安定化や最適なグリッド作成方法の開発、ならびに電顕マップからの柔らかい構造の動きを引き出す解析方法と組み合わせることで、 “柔らかい”一回膜貫通タンパク質に適したクライオ電子顕微鏡解析法の確立を目指す。本研究によって、多くの柔らかい全長分子の構造特性や、全長での機能発現のメカニズムが明らかになることが期待できる
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研究実績の概要 |
従来のタンパク質結晶構造解析では“硬い構造”をもつタンパク質が対象とされ、多数のタンパク質分子の硬い構造を平均化することで高分解能での立体構造情報が得られてきた。一方、細胞膜上の受容体などの一回膜貫通タンパク質の多くは、”柔らかい構造”を取っていることが多い。近年、結晶化を必要としないクライオ電顕単粒子解析の発達により、これまで結晶化が困難であったタンパク質の構造解析が大きく進展している。しかし、一回膜貫通タンパク質の場合は、柔らかい構造のため、凝集などグリッド作成上の問題があり、依然として全長での構造解析は進展していない。 そこで本研究では、柔らかい構造をもつ一回膜貫通タンパク質の一つである、カーゴ受容体ERGIC-53をモデルとして、柔らかい分子に適したグリッド作成方法を開発し、さらに得られて電顕データからの各分子の動きを引き出す解析方法を組み合わせることで、 “柔らかい”一回膜貫通タンパク質のクライオ電子顕微鏡単粒子解析法の発展させることを目指す。 本年度は、精製に成功したERGIC-53について、グリッド作成条件の最適化に取り組んだ。スクリーニングの結果、フッ素化Fos-Choline-8を添加により粒子の分散性が向上し、クライオ電顕による単粒子解析に成功した。構造解析の結果、全長ERGIC-53は、ヘッド領域とストーク領域、膜貫通領域で構成されており、四葉クローバーに類似した全長構造を取ることが分かった。また電顕データの3次元変動解析という解析手法を導入することによって、ERGIC-53のストーク領域が柔軟に動く様子を可視化することにも成功し、柔軟な構造変化を利用したカーゴ認識機構が明らかになった。以上の成果を、Nature communications 誌に発表した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フッ素化Fos-Choline-8の添加による粒子の分散性の向上や、3次元変動解析によるERGIC-53のダイナミックな構造変化の可視化に成功しており、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ERGIC-53の構造決定には至ったものの、グリッド内には凝集物が見られるなど、グリッド条件は更に最適化できる余地がある。そこで引き続き、添加物によるグリッド作成条件の最適化を進める。またグラフェン支持膜グリッドなど、様々な材質を試して、より分解能の向上に努める。一方、今回の解析手法を利用して、他のカーゴ受容体など他の一回貫通膜タンパク質の構造解析にも取り組む。
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